世界遺産に登録されている奈良の薬師寺。その主要伽藍(がらん)の一つ「食堂(じきどう)」は僧侶が食事をし修行する場として奈良時代前半に建てられたが、973年に火災で焼失。1005年に再建された後、再びその姿を消した▼1968年から白鳳伽藍の復興を進めてきた薬師寺は2015年春、食堂の再建事業を始動。学識者、建築家、ゼネコンがタッグを組み、文献や絵画を参考に創建当時の姿の再現を目指した▼伝統建築を復元するために導入されたのが最新のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)だ。寺院建築特有の優美な意匠をはじめ、骨組みの構造、設備を細部までモデル化。堂宮大工が培ってきた伝統技法と鉄骨造りの現代技術を融合した施工を高いレベルで実現し、関係者の意思疎通や生産性向上にも寄与した▼外観は奈良時代の意匠を凝らした造りで、内部は現代技術を活用して広い空間を確保。現代の技を取り入れながら伝統の技で復元した古くて新しい建造物がこの春完成した▼落慶法要は26~28日、一般公開は7月1日~11月30日。将来に残る「平成の国宝」。拝観できる日を楽しみに待ちたい。
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