2015年7月1日水曜日

【回転窓】日本一の飯炊き女


 企業の株主総会が集中した6月末。この時期は、各社にとっては経営陣の世代交代が進む時でもある。建設業界でも、社業や業界団体の活動を引っ張ってきた多くのベテランたちが一線を退き、次の世代にバトンを引き継いだことだろう▼「黒部ダムの建設工事に心を打たれて一直線に入社した」というあるゼネコンの首脳もそうした一人。理事を10年以上務めた業界団体の活動を退くに当たって、土木技術者として歩み出したころのエピソードを披露した▼「つらい仕事の後に少ないおかずでご飯をたくさん食べることが現場で働いていた当時の男衆の原動力だった。私は『日本一の飯炊き女』と言われたの。黒部ダムを造ったのは私なのよ」。黒部ダム工事の作業員宿舎で炊事に携わった女性から聞いた言葉という▼そして、「改正公共工事品質確保促進法が現場の最前線まで浸透した証しは、建設現場を誇りに思ってくれる日本一の飯炊き女のような方々が再び登場してくれること」。退任のあいさつをそう結んだ▼現場に真摯(しんし)に向き合ってきた人ならではの言葉であろう。感謝とともに気持ちを新たにしたい。

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