2015年10月1日木曜日

【貴重な土木遺産を守る】九州整備局のデ・レイケ導流堤解体調査が佳境

上流側から見た「デ・レイケ導流堤」
 九州地方整備局が福岡・佐賀県境付近に計画している有明海沿岸道路(有沿道)の長大橋「(仮称)筑後川橋」の下部工(P6橋脚)工事現場で土木学会の選奨土木遺産「デ・レイケ導流堤」の解体調査が佳境を迎えている。漁業や船舶の航行への影響を避けるため導流堤の上に橋脚を設けるのを機に、導流堤の一部を解体し調査。解体した導流堤は近隣の公園などに移設展示する。地域の新たなシンボルとなる橋梁の工事と併せて地域を支えてきた土木遺産の価値を後世に伝えるという全国的にも珍しい取り組みが着々と進められている。

 ◇有沿道・筑後川橋建設で移設◇

 デ・レイケ導流堤は土砂の堆積を抑え航路を確保する目的で筑後川下流域の河川中央部に延長約6・5キロにわたり築造。当時の内務省技術顧問のオランダ人技師、ヨハネス・デ・レイケの指導により約3年をかけて1890年に完成した。

 同時期に国内で造られた他の導流堤に比べ規模が大きく、軟弱地盤の地域にもかかわらず地盤沈下がなくほぼ築造時の姿をとどめているとされるが、内部構造は正確には分かっていない。このため、橋脚の設置を機に詳細な解体調査を行い、その記録を保存することにした。

 解体の範囲はP6橋脚を設置する上流側の延長22・8メートル。導流堤をまたぐ形で作業構台を造り、鋼矢板で締め切って水を抜いた上で9月中旬に着手した。仮締め切りの中に作業員と重機が入り、石組みを一つ一つ取り外し洗浄してクレーンで引き上げ、船とトラックで仮置き場へ運搬する丁寧な作業を繰り返す。撤去する石にはすべて番号と組み方が分かるような印をつけ、再構築しやすいよう工夫している。

 現在は上部の張り石などの撤去を終えた状態で、撤去した石の数は全体のおよそ半分に当たる約840個。高さ約5メートルのうち堤頂から2メートル付近まで解体している。

解体調査が進む筑後川橋下部工の施工箇所
 これまでの調査では、雑木を束ね一定の大きさにそろえた「粗朶(そだ)」をユニット化し基礎として使用したことが実証されたほか、深い位置にあると推定されていた粗朶が堤頂から2メートル付近の比較的浅い箇所に使われていることや、張り石の側面の砂に接する箇所に「胴木」と呼ばれる木材が配置されていることが新たに発見されたという。

 今後も引き続き解体と並行して内部構造の形状計測や記録、内部の地質調査などを行い、10月中旬に解体を終え、橋脚の工事を本格化する。解体した導流堤の一部は近隣にある福岡県大川市の筑後川昇開橋展望公園など2カ所で再構築し展示。橋脚については幅を導流堤の幅以下に抑え導流堤より目立たないデザインを採用し、橋脚の周囲の張り石積みを再現する。

 施工を担当している村本建設の重安満工事所長は「決まっていないことは多いが、導流堤の構造が分かり、それに近い形で(橋脚の周辺部も)復元できれば」と話し、九州整備局福岡国道事務所の森賢二計画課長は「地域になじみがあるものが保存され、遠目に見ていたものを近くで見られるようになる。(調査記録や移設展示する導流堤の一部を)地域の活動にも活用してほしい」と期待を込めた。

 筑後川橋はアプローチ部を含む総延長1008メートル。このうちメーンの河川部は延長450メートルの鋼4径間連続中路アーチ橋。P6橋脚は下部工の中央部に当たり、16年12月の完成を予定している。

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