無人化施工で不安定土砂を撤去した阿蘇大橋地区(左)、昨年12月の俵山 トンネルルート開通式(右上)、熊本城天守閣の復旧イメージ(右下) |
昨年12月24日。大きな被害を受けて通行不能となっていた県道熊本高森線の俵山トンネルルートの開通式が南阿蘇村の現地で行われた。復旧には数年かかるといわれたが、県から法律に基づく権限代行を受けた国交省の迅速な対応もあり、震災発生からわずか8カ月という異例のスピードで開通へとこぎ着けた。
開通式では、「住民が『建設業者の皆さん、ありがとう』と手や旗を振って感謝してくれた」(橋口光徳熊本県建設業協会会長)。建設業が地域の守り手の役割を果たしていることを実感させる一幕になった。
被災地の復旧・復興を大きく進展させる機動力にもなる同ルートの開通に続き、大規模な斜面崩壊で国道325号阿蘇大橋が通行止めとなった地区では、無人化施工を導入した不安定土砂の撤去が昨年末までに完了。本年度にはのり面を安定化させる恒久対策に着手する。落橋した阿蘇大橋の下流側の村道ルートは今夏の開通を目指し事業が進む。国交省は、阿蘇大橋の架け替えと国道57号の北側に整備する復旧ルートのトンネル工事の契約手続きを3月に済ませ、2020年の工事完了を目指している。
復旧ルートのトンネル工事で国交省は、設計段階から施工者のノウハウを取り入れるECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を採用。さらに、事業を円滑に進められるよう、第三者の立場で事業全体を管理運営するCM(コンストラクション・マネジメント)方式も複数発注するなど、官民の技術力を結集し、被害が局所的な熊本地震の特性を考慮した最適な方式による事業展開を図っている。
被災地では、直轄河川の本復旧工事も梅雨期までに完了する見通しだ。砂防事業の進ちょくに合わせ、一部区間の運転休止が続くJR豊肥線の復旧なども進められる。甚大な被害が生じた熊本城の復旧事業や使用不能となった複数の自治体庁舎の整備、被災した住宅の再建はこれからが本番となる。
国と自治体の工事発注が集中することで懸念された入札不調・不落の増加。1月に石井国交相を訪ねた熊本県の蒲島郁夫知事は、一般土木工事の積算に復興歩掛かりと復興係数を導入するよう要望。直轄事業に取り入れた特例が県や市町村にも広がった。県発注工事で1月に20%を超えていた入札不調は、事業量が3倍に膨らんだ3月には20%を割り込むなど一定の効果が表れている。
熊本地震を教訓に日本建設業連合会(日建連)は、避難施設となる公共建築物の耐震補強を関係機関に要請する。全国建設業協会(全建)は、東京の本部が被災した際の代替施設を17年度中に決め、「応災力」を強化することにしている。
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