人文科学と自然科学の融合が新たな発見を導くことがある。平安・鎌倉期の歌人・藤原定家が日記「明月記」に書いた「赤気(せっき)」という現象の解明もその一つ▼定家は1204年2月の日記に京都の夜空に連続して赤気が現れたと記す。この解明に挑んだ国立極地研究所や国文学研究資料館らのチームがこのほど「オーロラの可能性が高い」と発表した▼中国の歴史書「宋史」の同年2月の記録に、太陽の中に大きな黒点があるとの記述を発見。当時はオーロラを発生させる太陽活動が活発で、低緯度の京都でもオーロラが見えたと結論付けた▼人文・自然科学融合の成果をもう一つ。昨年8月に北海道を襲った一連の台風による豪雨で破堤氾濫が起きた場所を調べた地盤工学会が、古地図から過去の川の流れを特定し、治水のために行われた河道変更部に被害があったと結論付けた。「川は戻ろうとする」とは関係者の言葉▼過去の文献や民間伝承を掘り起こし、安全な暮らしに生かそうという声は地震や台風に襲われるたびに聞こえてくるが、どこまで行われているか。科学の融合で過去に学ぶ姿勢を常に持ちたい。
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