2017年4月5日水曜日

【技能教育リポート】竹延とKMユナイテッド、職人育成にスマホ活用

 大阪の専門工事会社が、若手や中堅層の職人が効率的に技能の習得・向上に取り組める新たな仕組みを考案した。クラウド上に記録した熟練技能の動画とテキストを教材に、スマートフォンを使っていつでもどこでも自己学習ができる。ICT(情報通信技術)を生かした職人育成ツールとして現場施工の生産性を高めるのに役立てていく。

 考案したのは、建築塗装の竹延(大阪市都島区、竹延幸雄社長)と子会社のKMユナイテッド(同)。他産業の育成ツール制作で実績のあるトライス(神戸市中央区)の協力を得て制作。「職人速戦力」と名付けた。関西の2府4県に広がる現場施工を担当する人材が離れた場所でも自己学習できるテレワークを発展させ、時間の制約も受けずにいつでも学べるようにした。

 ベテラン職人の技を、見る側の理解を重視して撮影し、編集にも工夫を施した動画に記録。技能を数値や言葉で表現し、専門用語の説明も加えたテキストで理解促進につなげる。学習過程で分からないことをコメント欄から質問すれば、ベテラン職人が直接回答する双方向性も備えている。

 レベルに応じたカリキュラムにより、若手に加え、大多数を占める中間層が自己研さんできるのも特色。若手の指導役にも期待される中間層が教え方を学ぶことで、組織全体の技能レベルを高めていく。

 老舗塗装会社の竹延から派生して13年1月に発足したKMユナイテッドのビジネスモデルは人材育成。初期段階で若手が行う作業を前半工程に特化させ、大事な戦力であることを実感しながら「3年以内に面白いと感じさせる」(竹延社長)。10年で一人前とされる従来の常識を覆す戦略だ。

 昨年、大阪市都島区の所有地に「大阪職人育成塾」と呼ぶ自前の施設を完備。定期的にベテラン職人から直接指導を受けられるようにした。KMユナイテッドは年内に京都に移転。左官など塗装以外の職種を含めて伝統技能を学べる「京都職人育成塾」も立ち上げる。応用力を備え、付加価値の高い現場施工も担えるようにするのが狙いという。

 竹延社長は、職人速戦力で他地域の職人育成活動と連携することも模索。さまざまな職種の熟練技能を記録し、育成効果が高く人気もある映像やテキストが上位に来る「職ログ」で、業界に広く活用されるシステムによるビジネス展開を目指す。

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