2019年9月2日月曜日

【西新宿エリアで先行実装へ】東京都の5G戦略、道路や公園も基地局に開放

 ◇西新宿エリアで先行実装へ◇

 世界で広がる第5世代通信規格(5G)実用化の流れに乗り遅れまいと、東京都が独自の5G普及策に乗りだす。

 8月29日に小池百合子都知事が都庁で記者会見を開き、都が率先して5Gネットワークの早期構築を後押しすると表明。基地局設置への都有資産の開放や「5G重点整備エリア」の設定などを柱とする基本戦略を打ちだした。2020年春に予定される国内での商用サービス開始をにらみ、今秋にも通信キャリア各社との連携に向けた話し合いを始めるという。

 「(政府が提唱する超スマート社会の)ソサエティー5・0の具現化で、中国は一歩先を進んでいる」。8月下旬に中国・北京市を訪問した小池知事は、ライバル都市の現状を目の当たりにして危機感を募らせる。現地では自動運転技術や無人のスーパーなどを視察し、イノベーションの進展を実感したという。

 小池知事は道路や鉄道といった従来の都市インフラに加え、「電波の道」が21世紀の基幹インフラになると指摘。最先端の移動通信網である5Gネットワークの早期構築を、世界の都市間競争を勝ち抜く必須の条件に挙げた。

 都の基本戦略は7月に就任した元ヤフー社長の宮坂学参与を交え、庁内の特別チームで練り上げた。教育や医療、交通、防災などの分野で5Gと先端技術の都市実装を試行する方針だ。都内の特定エリアでの都市実装の取り組みの数々をショーケース化し、都内全域へ、さらには全国へと広げていく道筋を描く。

 手始めに、基地局の設置場所として都の保有資産を開放する。宮坂参与は東京ビッグサイト(江東区)や東京国際フォーラム(千代田区)などの都有施設に加え、多様なインフラ資産も活用できると指摘。▽都道(総延長約2200キロ)▽都立公園(総面積約2000ヘクタール)▽電気設備を備える都営バス停(計約400カ所)▽都営地下鉄の出入り口(計約100駅)-などを例示し「ものすごい(膨大な)アセットがある。通信キャリア各社にもインパクトがあるだろう」とアピールする。

 都有資産の利用手続きを簡素化するため、ワンストップ窓口を創設する構想も明らかにした。基地局を設置可能な都有施設をデータベース化し、通信キャリア各社に情報提供することも想定している。

 ポテンシャルの高いエリアを「5G重点整備エリア」に設定し、基地局の集中的な整備を促す方策も展開する。具体的なエリア選定は通信キャリア各社へのヒアリング次第だが、当面は20年東京五輪・パラリンピック関連施設とその周辺エリアで整備を加速させる。

 都有施設の集積などを理由に、西新宿エリア(新宿区)も重点整備の候補地とした。宮坂参与は「新宿に少ないスタートアップ企業がどんどん集まるようにしたい」と期待を込める。首都大学東京に5Gを導入し、最先端のICT(情報通信技術)による研究環境を整える可能性も示した。

 都が自ら5Gを活用した施策を展開することも目標に掲げた。小池知事は「先端技術で都民の生活をアップデートする」と狙いを話す。ICT教育や遠隔診療、自動運転、交通監視・制御など活用方法は幅広い。防災対策の例としてドローン(小型無人機)による河川水位のリアルタイム監視も挙げた。

 都が基本戦略に掲げた各種施策が本格始動するのは20年以降。建設関連企業に与える影響は未知数だが、5Gネットワークの整備段階と活用段階の両面でビジネスチャンスが巡ってくる場面は出てきそうだ。

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