2019年9月10日火曜日

【記者手帖】仕事との両立が普通な世の中に

趣味の落語を楽しもうと寄席へ足を運んだ。久しぶりに見掛けた仲間に声を掛けると「脳出血になって無沙汰をしてしまった。ストレスはダメだって。仕事と落語の両立は大変だよ」◆昭和を代表する落語家の八代目桂文楽(1892~1971年)は、一つ一つの噺(はなし)を徹底的に磨き上げ、寸分たがわぬ格調高い話芸で観客を魅了した。文楽はある落語会で言葉に詰まり絶句。「もう一度、勉強し直して参ります」と謝り、二度と高座に上がることはなかった◆文楽のように潔く進退を決める人はまれにせよ、責任感の強さから進退を決める人は多い。取材で建設会社の総務担当者が、働き方改革関連法案に沿って就業規則の改定に取り組む悩みを口にした。中小企業で人員に余裕がなく、長時間労働も常態化。育児や介護、病気などの問題が起きると離職者が出やすい。会社の永続のためにも早く社員が働きやすい制度を整えたいが「理想と現実はかけ離れている」◆仕事と人生の転機で起きるさまざまなこととの両立が普通になる多様な世の中。遠からず、そんな環境になればと願っている。(ら)

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