土木学会(林康雄会長)は25日、2019年度の「土木学会選奨土木遺産」として28件を選定したと発表した。日本の高さ(標高)の基準として、1891年に陸地測量部(国土地理院の前身)が創設した原点標と、それを保護するための石造施設「日本水準原点標庫」(東京都)などが選ばれた。
2019年度「土木学会選奨土木遺産」は次の通り(▽件名=〈1〉所在地〈2〉完成年〈3〉選定理由)。
▽旧運河橋=〈1〉北海道石狩市〈2〉1936年(81年移設)〈3〉道内で最古、国内でも最初期の全溶接単純鋼鈑桁橋
▽旧浦村鉄橋=〈1〉新潟県長岡市〈2〉1898年〈3〉3橋のうち2橋は120年以上現役で活躍
▽日本水準原点と日本水準原点標庫=〈1〉東京都千代田区〈2〉1891年〈3〉日本の標高の基準として1891年に陸地測量部(国土地理院の前身)により創設された原点標とそれを保護する建築史上貴重な石造施設
▽鹿島港整備関連施設群=〈1〉茨城県神栖市〈2〉1963年船溜南防波堤、68年居切島、69年鹿島港開港〈3〉世界有数の掘込型港湾整備に伴う厳しい自然との対峙(たいじ)や住民の思いを伝える施設
▽滝の鼻橋=〈1〉埼玉県ときがわ町〈2〉1925年〈3〉都幾川に架かる鋼製のワーレントラス橋梁で、山型鋼をリベットで結合したトラスを使用
▽土合砂防堰堤=〈1〉群馬県みなかみ町〈2〉1941年〈3〉湯桧曽川に建設された群馬県初のアーチ式堰堤で、砂防を目的として谷川岳と一体となって景観を形成
▽旧熱海線鉄道施設群=〈1〉神奈川県小田原市、静岡県熱海市・函南町〈2〉1934年〈3〉関東大震災など幾多の災害を克服し、世界に誇る土木技術の歴史を今に伝える
▽旧国鉄足利駅舎=〈1〉栃木県足利市〈2〉1933年〈3〉昭和初期建造の現役駅舎
▽上蔵砂防堰堤=〈1〉長野県大鹿村〈2〉1954年本堰堤、67年副ダム、71年第2副ダム〈3〉戦後、花こう岩切石の丁寧な練石積みにコンクリートを充てんしすべて人力で造られた大規模なアーチダム
▽忠節橋=〈1〉岐阜市〈2〉1948年〈3〉ブレーストリブバランストアーチ鋼橋
▽揖斐大橋=〈1〉岐阜県大垣市・安八町〈2〉1933年〈3〉6連曲弦ワーレントラス橋
▽賀茂川・鴨川河川構造物群=〈1〉京都市〈2〉1947年(左岸中流部は暫定整備状態)。当該範囲は99年に改修工事完了〈3〉わが国有数の河川景観と親水空間創出に貢献
▽嵯峨野観光鉄道の構造物群=〈1〉京都市~京都府亀岡市〈2〉1899年〈3〉格調高い意匠性とともに、観光資源としても活用
▽関西本線三郷~河内堅上間橋梁群=〈1〉奈良県三郷町~王寺町~大阪府柏原市〈2〉1932年〈3〉大規模な地すべり地を迂回(うかい)するために特異な架構形態を採用
▽戦前竣工の京都市児童公園群=〈1〉京都市〈2〉1935~42年〈3〉特徴的なラジオ塔や水飲み場などがヴィスタを形成し、地域市民に親しまれ続けてきた
▽平野橋=〈1〉大阪市〈2〉1935年〈3〉世界で初めて逆ランガー形式を採用
▽逆瀬川の砂防設備=〈1〉兵庫県宝塚市〈2〉1934年ごろ〈3〉赤木正雄によるわが国で最初の流路工の事例
▽七川ダム=〈1〉和歌山県東牟婁郡〈2〉1956年〈3〉常用洪水吐きに国内最古の高圧スルースゲートを設置した多目的重力式コンクリートダム
▽大砂川トンネル=〈1〉滋賀県湖南市〈2〉1889年〈3〉天井川である大砂川をくぐる石・れんが造りの鉄道トンネル
▽琵琶湖疏水鴨川運河施設群=〈1〉京都市〈2〉1894年ほか〈3〉橋梁などが群として存在する独特の景観を造り出している
▽上津屋橋=〈1〉京都府八幡市~城陽市〈2〉1953年〈3〉わが国屈指の大規模な木造流れ橋で、コスト縮減を図りつつ風情ある景観を保つ取り組みが続けられている
▽用郷林道七曲がり=〈1〉岡山県新見市〈2〉1912年〈3〉若き技術者と地元石工による建設のエピソードが語り継がれた石積のつづら折り林道
▽大原橋=〈1〉岡山市〈2〉1942年〈3〉1934年の室戸台風の災害復旧橋梁として架橋された戦前最長のRCローゼ桁橋
▽麻生堰=〈1〉高知県四万十市〈2〉江戸時代前期〈3〉野中兼山によってつくられた曲線斜め堰で、建設当時の姿のまま現役で活用されている
▽上椎葉ダム=〈1〉宮崎県椎葉村〈2〉1955年〈3〉大調整能力を持つ水力発電用ダムとしては日本初の大規模アーチ式ダム
▽川畑井堰=〈1〉鹿児島県南さつま市〈2〉宝暦年間(1751~63年)〈3〉幅18メートル、高さ3メートルを有する切り石による階段状の取水堰堤で、近世由来の取水堰堤としては全国で唯一
▽若松港築港関連施設群=〈1〉北九州市〈2〉1890~1935年頃〈3〉筑豊炭田からの石炭の積み出し基地として開発整備され、大正期には日本最大の石炭積み出し港として繁栄し、日本の近代化に大きく貢献した。
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