仲間とスクラムを組み、プロジェクトに磨きをかけていく |
「こんなに大変だとは思っていなかった」。デベロッパーで広報を担当する中村知宏さん(仮名)は、配属直後の心境をこう述懐する。これまで経験してきた部署と全く異なる環境に戸惑い「やっていけるのだろうか」と不安に駆られた。それでも仕事を続けていくうちに広報という仕事の醍醐味(だいごみ)や、果たすべき役割に気付いていった。
学生時代はラグビーに明け暮れた。街を作り上げるため、たくさんの人が力を合わせて「トライ」を目指すデベロッパーの仕事にひかれた。入社してから約10年間、東京都内と地方で多くの開発プロジェクトに携わった。長い時間をかけ検討してきたプロジェクトが実を結び、街ににぎわいが生まれていくことにやりがいを感じていた。
人事異動の傾向から大きな配置転換を覚悟し始めた時、広報担当に就くことを命じられた。当時は広報の仕事について「比較的現場に出る機会も多く楽しく仕事できそう、というぐらいにしか考えていなかった」。
その考えはすぐにもろくも崩れ去った。絶え間なく寄せられるマスコミからの問い合わせ。その対応に異動直後から戸惑った。それまで担当していた開発事業とは違い、広報の仕事は迅速な回答を求められるケースが多い。適切な答えをすぐに用意できず厳しい言葉を浴びせられたのは一度や二度ではない。悔しさが胸にこみ上げた。
ニュースリリースの作成にも悪戦苦闘した。「文章の構成以前に書き出しが浮かばない」。新聞を熟読するなど必死に勉強を続け、どういった文章にすれば自社の取り組みを正確に伝えられるのか、常に考えながら試行錯誤した。
広報担当に就いて2年が経過し、ようやく仕事が板に付いてきた。慣れてきて感じるようになったのは「プロジェクトについて誰よりも深く知っていなければならない」ことだ。社内の検討体制はハードやソフトなどで部署が分かれている。広報はそれぞれの動きや特長を正確に把握し、情報を外部に発信する必要がある。プロジェクトへの理解を深めるためにも、他部署の社員との積極的なコミュニケーションを心掛けている。
マスコミが求めている情報も分かってきた。建設専門紙は事業手法や延べ床面積、設計・施工業者などを質問してくる。一般紙の記者から聞くことがない専門用語が出てくることも。それでも質問の趣旨を瞬時に理解できる。「現場に出ていた経験」は部署が変わっても生きている。
会社が取り組むプロジェクトには、街の姿を大きく変える大規模なものも多い。現場にいたからこそ「前線にいる社員の苦労やプレッシャー」が理解できる。彼らの思いや苦労を無駄にしないためにも「プロジェクトを広く知ってもらい、当社のイメージアップにつなげる存在になりたい」と思っている。プロジェクトを成功に導くプレーヤーの一人として、広報担当の役割を全うしようと心に決めている。
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