NTTドコモは、第5世代通信規格(5G)の商用サービスが今春開始されるのに伴い、社会インフラの整備・維持管理や、街づくりでの5G活用を一段と強化する。
橋梁の劣化推定技術や、NTTと協力した測位技術の開発を推進。建設現場向けのソリューション提案にも力を入れる。高速大容量通信や低遅延といった5Gの特長を生かすことで、提供サービスの価値を高められるとみて、対応を進める。
同社は撮影した動画、車両走行時のたわみ、車重から橋梁の劣化を人工知能(AI)で推定する技術の実証を、富山市で昨年12月から京都大学と始めた。表面の劣化、損傷からは把握できない構造物としての健全性を見極める。
動画の撮影に市販または工業用のカメラを利用しており、送受信するデータが多い。5Gによって高速大容量通信に加え、動画の解像度が高まり取得できる情報が増やせる見通しで、研究開発を推進する。
情報化施工の分野では、高精度GNSS(全球測位衛星システム)の位置情報を電波の不具合が出やすい都市部でも活用するための実証に早ければ2月にも着手する。取得した情報の演算機能を担うクラウドタイプの測位エンジンを使った検証作業をライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティングと始める考え。NTTとも協力する。
人や物など工事現場のさまざまな情報を集約・管理し、業務を効率化する「ドコモ建設現場IoTソリューション」は、ゼネコンの複数の建築現場で活用されるようになった。進捗(しんちょく)が遅れている理由をエリアごとに把握したり、依頼した作業の遂行状況をチェックできたりする機能などの実装を視野に入れる。
導入現場の意見を収集・分析し提供するサービスの改善に役立てる。人のコミュニケーションに着目し、翻訳ツールを組み合わせた多言語対応のサービス提供も急ぐ。
5G対応の基地局整備が進展するにつれ、維持管理の業務が増えるため、VR(仮想現実)を活用した危険の体感コンテンツを充実させる。過去の事故の事例などを踏まえ、新人教育や作業前の安全教育などに役立てる環境整備を進める。5Gの無線技術を応用した建設・鉱山機械の遠隔制御システムのデモンストレーションなども積極的に開く。
NTTドコモは、23~24日に東京都江東区の東京ビッグサイトで「ドコモオープンハウス2020」を開き、5G、AI、IoT(モノのインターネット)関連の技術、サービスの情報を広く発信する。会場に建設関連のブースも設ける。
□6G実現へ技術開発に本腰□
NTTドコモは第6世代通信規格(6G)の実現に向けた技術開発を本格化する。今春に商用サービスがスタートする5Gの性能をより高め、海上や空中に加え、宇宙での通信の実現を目指す。電力消費を大幅に抑えるとともに、危険な作業のロボットなどによる無人化を後押しする。
同社は2018年から6Gに向けた検討と研究開発を続けていた。他業界や官学とも幅広く連携。早期の実用化によって国際競争で主導権を狙う。6Gは2030年ごろの実用化が見込まれている。
同社は22日、6G開発の技術コンセプトを発表した。開発の方向性として▽超高速・大容量通信▽空、海、宇宙への通信領域の拡張▽超低消費電力化▽超低遅延▽危険な作業を伴う産業向けへのカスタマイズ▽超多接続-などを挙げた。
超高速・大容量通信に向けては、テラヘルツ波など新たな高周波数帯を開拓。超低消費電力化によって充電不要な端末の開発につなげる。接続可能なデバイスの数を1平方キロ当たり1000万デバイスに拡大する。製造業や建設業など危険な作業を伴う業界に対しては6Gを駆使することで省人化、無人化できる作業の幅を広げる。
6Gを見据えた戦略検討では、総務省が月内に有識者会議を開催する。目標とするサービスや必要不可欠な技術などを示す総合戦略を今夏に策定する。
5Gの商用化では車の自動運転やスマートシティーの整備、遠隔医療などが期待される。ただ中国や米国に比べ関連特許の取得などで取り組みは遅れており、国際競争力の低下を危惧する声が高まっている。