2020年1月21日火曜日

【駆け出しのころ】東亜建設工業執行役員東北支店長・後藤良平氏

 ◇土木の素晴らしさ伝え続ける◇

 昔から本を読むのが好きな子どもでした。学生時代には曽野綾子さんの『無名碑』や吉村昭さんの『高熱隧道』、木本正次さんの『黒部の太陽』を読み、仕事に就くなら土木しかないと考えていました。

 就職活動では官庁やコンサルタントに全く関心がなく、会社名は問わず建設会社に入れればと思っていました。学校推薦のあった建設会社のうち、東亜建設工業に入社することになりました。

 入社1年目はいろいろな現場に数カ月の応援に出向くことが多かったです。2年目の夏、あちこちの現場を短期で回ってばかりの自分の姿を見かねた現場所長が、千葉県市川市の工業用水シールドトンネルの現場に呼んでくれました。坑内の距離が日々伸びていくのを実感しながら、毎日楽しく掘進測量を行っていました。

 次に配属された道路トンネルの開削工事は、超突貫の現場でした。工事が進むと隣の工区とトンネルの枠が合わず、ずれていることが判明。間違った相手側の企業が壊して作り直している姿を見つめながら、測量は気を引き締めてやらなければと心にとどめました。

 これまで携わった9本の高速道路のトンネルのうち、一番印象に残っている現場は初めて作業所長を務めた秋田県内のトンネル工事です。地質が悪く、メタンガスが出るなど、難工事となりました。より良い対策を打ち出すのに奔走し、なんとか当初の工期内で完工できました。

 公共工事への風当たりが強かった時も、周りに惑わされず、社会のためにしっかりとしたものを造ろうと頑張ってきました。東日本大震災では道路が市民にとって「命の道」になりました。私は今でも土木の仕事が大好きで、大いにやりがいを感じています。

 信濃川大河津分水の自在堰改修工事の竣工碑に刻まれた、「万象ニ天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ 人類ノ為メ国ノ為メ」という土木技師・青山士の言葉。いろいろな解釈がありますが、私は「土木の対象は自然と人間の織り成す万象であり、この万象に自然の真理を悟ることが技術者の喜びである。人類のために、国のために働こう」と捉えています。

 若い世代には土木の仕事のスケールの大きさや重要性、素晴らしさを伝えていきたい。東北の被災地で津波の到達点に桜の木を植えるボランティア活動に支店の若手を先日連れて行きました。土木の仕事の重要性を再確認し、日々の仕事に励んでくれています。

 仕事に集中する一方で、気分転換も大切です。若いころは現場が終わると、山登りをよくしていました。最近は合唱をやっており、仙台で定期開催される第九コンサートにも参加しています。来月23日には東京の両国国技館で行われる5000人の第九コンサートに参加します。興味のある方はぜひ鑑賞して下さい。

入社2年目ごろ、シールドトンネルの現場で関係者らと(後列左端が本人)
(ごとう・りょうへい)1983年東海大学工学部土木工学科卒、東亜建設工業入社。執行役員土木事業本部技術部長などを経て、2018年4月から現職。岩手県出身、59歳。

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