東京五輪・パラリンピックの出場選手や家族の交流拠点となる仮設施設「選手村ビレッジプラザ」(東京都中央区)が29日に公開された。
「みんなで作る」をコンセプトに、全国63自治体が無償提供した地場産木材を用いて建設したことが最大の特徴だ。各自治体の部材が互いに支え合う架構形式をメインで採用し、設計にも「みんなで作る」という考えを盛り込んだ。
整備主体は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会。設計は日建設計、施工は熊谷組・住友林業JVが担当した。昨年6月ごろから各地の木材が続々と届き始め、同11月に棟上げが完了。4月に完成する。
5棟構成の建物には入村式や記者会見を行うスペースに加え、雑貨店やカフェ、ヘアサロンなどさまざまな生活関連施設がそろう。事務所などの小空間は格子梁架構、記者会見室などの大空間はトラスアーチ架構とするなど各棟の用途に応じ架構形式を変えた。
中でも目を引くのが、間仕切り壁を必要としないエントランスや選手らの交流スペースに使われた「レシプロカル構造」を応用したオリジナルの架構形式だ。3本の斜柱をツイストさせた組柱で梁を支え、部材が複雑に入り組む印象的な空間を演出する。
日建設計の高橋秀通氏は「各自治体の部材が持ちつ持たれつの形となり、互いに協力し支え合う」と狙いを話す。斜柱のツイスト方向が左右交互となるよう配置し、力の掛かり方を打ち消し合って強度を出せるようにした。
各自治体から木材を調達する方法も工夫した。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用し、約4万本の木材一つ一つの設計データを各自治体と共有化。部材の仕口などは地元で加工を済ませ、現場では組み立てるだけにした。
大会後に施設は解体され、10月以降に部材はそれぞれの地元に返却される。簡単にばらすことができるよう、主にボルトで締めるだけで部材をジョイントする方法を取った。
同日には木材提供自治体向けの披露式典と内覧会が開かれた。長良スギや東濃ヒノキを提供した岐阜県の古田肇知事は「木の香りがする心地いい空間を満喫した。部屋(棟)ごとに微妙に香りが変わり、回っているうちに63自治体の五輪への思いが伝わってきた」と感無量の様子だった。
式典に訪れた日建設計の亀井忠夫社長は「各国の選手らが集まり、交流する施設にふさわしく、各自治体が集まり、寄り合うデザインを実現した。ストーリーが一貫したものに仕上がった」と手応えを語った
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