2015年5月15日金曜日

【港好きなら一度はおいで】若築建設「史料館」が盛況

港湾開発の貴重な史料が170点以上展示されている
若築建設の創業の地・北九州市若松区にある「わかちく史料館」。製鉄業で日本を代表する工業地帯に成長を遂げた北九州湾岸エリアの一部を形成する洞海湾の変遷や、かつての生活の様子などを写真や資料で紹介している。洞海湾の開発に深く関わってきた若築建設の貴重な所蔵品も多く展示されており、昔の作業船の設計図などマニアにはたまらない逸品も。建設会社が自前で運営する史料館は全国でも珍しく、年間約1万5000人が訪れるという。

 ◇貴重な保存資料展示/マニアに人気の図面も所蔵◇

 同社は1890(明治23)年、北九州・若松港を石炭積み出し港にするための築営を目的に設立された「若松築港会社」としてスタートした。当時の洞海湾は、干潮時には港内の岩盤が露出するほど浅い港だった。若松築港会社は管理者として福岡県の許可を受け、港の開発を行うと同時に、入港する船から「港銭」と呼ばれる入港料を徴収するなど運営管理も担っていた。現在のPFI事業の先駆けともいえる。
 史料館は、そうした洞海湾とともに発展してきた同社の保存資料や地元に残る貴重な資料を集めて紹介するため、本店の建て替えに合わせて計画され、1997年3月に開館した。4階建て社屋の3階に入っており、若戸大橋の若松側橋脚のすぐ傍ら、港に面して入り口がある。
 史料館のテーマは、「洞海湾の開発事業を中心とした若松の歴史と人々の暮らし」。館内は▽洞海湾の歴史▽若築の歴史▽若松の歴史―の大きく三つのコーナーに分かれる。
 「洞海湾の歴史」コーナーは、幅3メートル、長さ10メートルの年表と1890年当時の洞海湾を再現した5000分の1のジオラマが来館者の目を引く。

若松港の使用料徴収時に発行していた当時の領収書
洞海湾の発展と歩調を合わせるように若松の町の変遷をたどるのが「若松の歴史」コーナー。ここでは、明治・大正・昭和時代の人々の暮らしや町の様子を知ることができる。
 「若築の歴史」コーナーには、若松と共に歩んできた同社が所蔵する約2700点を超える図面や文章資料の一部、大小合わせて約170点を展示する。洞海湾の拡張工事に使われたバケット式浚渫船の「第2洞海丸」「第3洞海丸」、サンドポンプ式浚渫船の「第4洞海丸」の図面や写真のほか、現場の施工図、測量機など貴重な品々が公開されている。
 島中久和館長は「作業船の図面はマニアに人気がある。製鉄関連の歴史や郷土史を研究している人も多く訪れている」と話す。
 史料館では、常設展に加え、企画展も定期的に開催している。昨年2月に北九州市が市政50周年を迎えたのにちなみ、今年2月には「北九州の風景~鉄河童と旧五市の祭り~」と題した企画展を行った。
 市内では毎年各区で代表的な祭りが行われている。企画展では、戸畑区在住の芸術家・中原弘さんに協力してもらい、鉄製の河童を主人公に祭りを再現したユニークな作品やポスター、写真などを組み合わせて展示した。展示中は普段より多くの来館者でにぎわったという。

明治時代の指令命令書綴
◇地元とのタイアップにも積極姿勢◇

 小学校や中学校、地域の企業や住民とのタイアップにも積極的で、「いろいろな人に来て、知って、利用してもらいたい」と島中館長。希望すれば、島中館長やスタッフの解説付きで館内を案内してくれるという。
 13年度末時点で累計来館者数は11万人を突破した。リピーターも多く、島中館長は「一企業が自社のPRではなく、地域の歩みを紹介する史料館は全国でも珍しいのではないか」と胸を張る。
 自社の歴史を知ることができるため、若手社員の研修や九州支店に配属された新入社員の教育にも使われている。今後も館内の資料を充実させていく考えで、島中館長は「明治、大正、昭和時代の若松の人々の暮らしぶり、町の様子が分かる写真や図書を持っている方にはぜひ協力してほしい」と呼び掛けている。

 《わかちく史料館》住所=北九州市若松区1-4-7、開館時間=午前10時~午後4時、休館日=月曜・祝日・年末年始(入館料無料)。

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