2015年5月25日月曜日

【駆け出しのころ】りんかい日産建設常務執行役員東京土木支店長・塚本喜之氏


  ◇隣の人のこともよく考え行動を◇

 海のない県で育ち、初めて海水浴に行ったのも小学5年になってからでした。このため、小さいころから海に対する憧れのようなものを持っていました。就職先に海上土木を得意とする会社を選んだのも、きっとそうした憧れがあったからだと思います。
 最初に配属されたのは仙台支店の事業所です。事務所に併設されている宿舎に寝泊まりし、朝一番に事務所へ行って掃除をするのが一日の始まりでした。同じ事業所に同期生が一人いましたので、その彼と二人で眠い目をこすりながら一生懸命に掃除をしていたのが思い出されます。
 新人ですから覚えることばかりだったのですが、測量だけは別でした。学生時代に測量事務所でアルバイトをしていた経験が生き、最初から現場で実施する一通りの測量はこなすことができました。
 この事業所には入社以来、十数年にわたって勤務しました。この間に堤防や護岸、浚渫といった海上土木だけでなく、河川や道路、造成などの陸上土木の工事にも携わり、土木技術者として大変に貴重な経験を積むことができました。
 私たちが若かったころはまだ、生コンの打設後に自らバイブレーターを操作するなど、若い職員が現場作業の一部も担いながら施工のことを覚えていったものです。現在のように施工管理と作業が明確に分かれているのも良いのですが、自分の手を動かした経験はその後のいろいろな場面に役立ちました。
 会社では「隣の人のことをよく考えて仕事をしよう」と言っています。自分だけが良ければ済むというものではありません。それには職場のコミュニケーションがとても大切です。人間関係が良好でないと、皆のモチベーションは上がりません。
 そして、例え一人が失敗したとしても、それを皆で共有すれば前に進むことができます。失敗を隠しては駄目です。土木の仕事は、頭が良い人がいればそれでうまくというものではありません。それぞれが与えられた役割で個性を発揮していかなければなりません。そのために上司は常に部下たちの適材適所を考えていく必要があります。
 若い人たちには、仕事では割り切ることも大切だと知ってほしいと思います。内に秘めて悩んでいても解決できないことはたくさんあります。「終わらない仕事はない。時間が解決してくれる」。私がかつて現場で悩んでいた時に教えてもらい、今も教訓にしている言葉です。時代や現場を取り巻く環境は変わりましたが、これからも十分に通じる言葉ではないでしょうか。
 (つかもと・よしゆき)1977年中央大理工学部土木工学科卒、臨海土木(79年りんかい建設、2003年りんかい日産建設)入社。東北支店土木部長兼安全部長兼品質環境管理部長、執行役員土木事業部長などを経て、15年4月から現職。埼玉県出身、60歳。

21歳の時、入社試験を受けるために提出した履歴書

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