現代人は、花見といえば普通は桜を思い浮かべるだろうが、江戸の人々には、桜に限らず多くの花々をめでる慣習があったらしい。「梅に始まり菊に終わる」との古い言葉もある▼江戸時代に桜の花見が普及する前は梅見が一般的だったそうで、その名所が今も続く亀戸天神(東京都江東区)。梅から桜に移り、その後はツツジ、藤、蓮、菊なども観賞するようになった▼こうした流行に目を付け、江戸後期には境内に庭園を整備した寺社も多い。亀戸天神は藤の名所としても有名で、浮世絵師・歌川広重が描いた錦絵が残る。ツツジが見事な根津神社(同文京区)、文人が開設した向島百花園(同墨田区)は都会のオアシスとして今も人気がある▼美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを花に例えた〈立てば芍薬(しゃくやく)座れば牡丹(ぼたん)歩く姿は百合の花〉。中でも牡丹は「百花の王」と呼ばれ、江戸の人々に特に人気が高かったとされる▼東京都町田市が運営する町田ぼたん園では大輪の花が見ごろを迎えている。ゴールデンウイークは海外に行かれた方も多かろう。今週末は庭園巡りで日本の美を堪能してみてはいかがだろう。
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