2015年5月11日月曜日

【駆け出しのころ】大豊建設取締役専務執行役員東京支店長・森克己氏


 ◇コスト意識を持って一人前に◇

 入社する前の1カ月間、中央自動車道の工事現場で研修を受けました。ここで非常に急な斜面にトランシットを据え付けるよう指示されたのですが、それが何度やってもうまくいかず、先輩にしかられたのを覚えています。当時はまだ木製の三脚でした。
 入社後、最初に配属されたのは名古屋総合工事事務所(現名古屋支店)の現場です。鉄道の橋梁の基礎を、当社が得意とするニューマチックケーソン工法で造る工事でした。
 27歳のころに担当した工事では、その後の自分に大きな影響を及ぼすことになる所長の下で働きました。とにかく厳しい所長で、二言目には「仕事を一日も早く覚えろ!」と言われたものです。仕事を覚えれば後ろ指をさされることがなくなるだけでなく、コスト意識を持つようになり、無駄な時間や余分なお金がかかるのを防げるという教えでした。
 そうした厳しい面を持ちつつ、現場で皆が集まる例会の日には、早朝に自ら鮮魚市場へ買い出しに行き、仕入れた魚を協力業者の人に配ったり、家族と暮らす職員に土産として持って帰らせたりしてくれる方でもありました。現場のチームワークを良好に保つため、細かな神経を使われていたのだと思います。
 最近は途中で退職する若い人が少なくありません。いろいろな理由があるのでしょうが、私たちが若いころには辛抱や我慢というのは普通のことでした。私もこれまでに何度も悔し涙を流したことがあります。でも、それで会社を辞めたいと考えたことはありません。そのたびに辞めていたらどうなっていたのかとも思ってしまいます。
 一口に建設会社といっても、そこで働く人たちの仕事は設計や施工、営業、経理などさまざまです。どれが一番ということはなく、すべてが横一線につながっているものです。私はどんな仕事でも興味を持ち、自分なりの価値を見いだすことが必要だと考えています。強制的でもよいから興味を持たないと、そこから追求していけません。興味でなくても問題意識を持つことが大切であり、これも仕事を覚えるために必要なことでしょう。
 それと、壁にぶつかったら、どのように乗り越えるかを考えることが重要です。逃げてばかりいたら、いつまでも解決を求められます。ですから、若い人たちには何かあったら周囲に相談し、何でも自分で抱え込まないでほしいと思っています。そのためにも上司はそれぞれの個性をしっかり把握しておくことが大切です。
 (もり・かつみ)1974年愛知工大工学部土木工学科卒、大豊建設入社。名古屋支店土木部長、東京支店長代理、東京支店副支店長兼土木部長、執行役員東京支店長、取締役常務執行役員東京支店長などを経て、12年4月から現職。三重県出身、64歳。

新人時代に携わった橋梁改良工事の現場で


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