最大傾斜36度のバンクを専用機で高精度舗装 |
◇世界トップの技術駆使◇
松本市はかつて、市内に「かりがね自転車競技場」を保有していたが、施設の老朽化と、同市をホームタウンとするサッカークラブ・松本山雅FCの練習拠点を整備するために解体。閉鎖していた浅間温泉国際スケートセンター跡地に新たな自転車競技場の整備を進めている。施工はNIPPO・松本土建JVが担当している。
NIPPOは、自動車のテストコースやサーキットの設計施工を数多く手掛けており、オートレース場や自転車競技場・競輪場の走路舗装でも高度な技術と豊富な施工実績を持つ。国内では、アスファルト舗装による自転車競技場のすべて、競輪場の約80%の走路を施工してきた。走路の補修・改修工事もコンスタントに手掛けているが、自転車競技場の新設は同社でも久しぶりだ。元請では99年竣工の宮城県自転車競技場(宮城県大和町)以来16年ぶり。下請で施工した三郷町六郷自転車競技場(秋田県三郷町、04年竣工)から数えても11年ぶりとなる。
建設地は松本市三才山1830。1周500メートルのスケートリンクがあった敷地で、管理棟と山に挟まれた横長の形状。この条件下で1周333・33メートル(3周で1キロ)、幅員7メートルの走路を整備するには、バンクの傾斜角を高くする必要があった。設計速度の秒速15メートルを満たすために最大傾斜角度を36度で設計。国内の自転車競技場では、泉崎国際サイクルスタジアム(福島県泉崎村)の38度に次いで2番目に急勾配なバンクとなった。
数々の現場で培った技術と経験が高精度施工を支える |
同社は長年の技術開発と施工実績を通じ、▽アスファルトスタッカー(合材をフィニッシャーに連続供給する機械)▽アスファルトフィニッシャー▽ロードローラー▽サポーター(フィニッシャーとローラーをつりながら移動する機械)―の4種類で構成する専用の施工機械を保有している。正確な高さ管理を自動制御するシステムの装備、斜め移動に対応したエンジンや油圧の位置・角度、つりながらの作業に備え車体の軽量化など、さまざまな技術を結集した専用機だ。
高い平滑性を求められる走路の舗装は、一定の速度を保ちながらトラック1周をノンストップで施工するのがポイント。最大20トンのアスファルト合材をためることのできるスタッカーを用いてフィニッシャーに合材を連続供給。フィニッシャーとサポーターのオペレーターが息を合わせ、一定のスピードを保ちながら敷きならす。
舗装工事が完了したバンク |
基層と中間層はそれぞれ2日間、表層は3日間をかけて走路を施工。4月23日には、4時間半の連続施工によって表層工程が終了し、走路が一つにつながった。仕上げの塗装(3層)も急斜面の上を人の手によって行われる。現場代理人の井上英樹氏(松本市美鈴湖自転車競技場建設工事事務所)は「精度や品質だけでなく、安全の管理もさらに徹底していく」と気を引き締める。
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