◇大規模工事現場で実習、若手の女性技術者を指導員に◇
担い手確保が待ったなしの課題となっている建設業界。新規入職者を呼び込むための取り組みは受発注者でさまざまだが、関東地方整備局は、各出先事務所の特色を生かしたインターンシップの実施に力を入れている。大規模工事を抱えている事務所は、現場監督の醍醐味(だいごみ)を伝える実習を行い、入省希望者の増加を図る。若手の女性技術者を指導員に起用して、建設業が女性も活躍できる産業であることをアピールする事務所もある。
国の行財政改革の一環として、関東整備局の新規採用の定員は最近まで大幅に抑制されていた。10年度は50人だった事務・技術系を合わせた採用者数は11年度から激減し、13年度は1桁にまで落ち込んだ。行き過ぎた抑制措置が見直され、採用が40人台に回復したのは昨年度のことだ。
◇遠ざかっていた距離、どう縮める◇
これまで、関東整備局のインターンシップに参加した学生は、11年度が23人(計15事務所)、12年度が32人(計19事務所)、13年度が31人(計21事務所)、14年度が39人(同)。定員増の前後で参加者数に大きな変化は見られないが、「遠ざかっていた学生との距離を直接縮められるインターンシップは、重要な取り組み」と関東整備局は捉えている。
短期間の就業体験で土木のエンジニアとして働く魅力を伝えようと、八ツ場ダム工事事務所は、昨年度に着工した八ツ場ダム(群馬県長野原町)本体工などの工事現場への立ち会いを今年の実習内容に組み入れることにした。港湾関係では、川崎港の臨港道路や、横浜港の国際コンテナターミナルなどの整備を手掛ける京浜港湾事務所などが現場実習の準備を進めている。
地方に拠点を置くある建設業者によると、企業のインターンシップでは、施主から請け負っている現場を実習の場として活用することは難しい場合もあるという。現場実習と内勤業務の双方を一度に体験できるのが、公共発注機関のインターンシップのメリットともいえる。
◇現場だけでない、建設産業の魅力◇
大規模なインフラ整備の魅力ばかりが学生を引き付ける要因というわけでもない。2年前に千葉国道事務所のインターンシップに参加し、今年入省した市原勇気さん(常陸河川国道事務所調査第二課)は、「当時は、国道の交差点改良に関する計画を自分で作成し、緊張しながら先輩たちの前で発表した」という。
市原さんはその実習を通じ、住民の生活のしやすさを考えることが地域の街づくりでどれだけ大切かを実感。現場に向かう先輩の真剣なまなざしにも背中を押され、入省を決心した。まだ慣れないことばかりというが、「『土木は経験工学』という信念を持ち、成長していきたい」と充実した日々を送る。
北首都国道事務所は、女性の働き手が少ない建設業のイメージを変えようと、今年のインターンシップで女子学生を優先的に受け入れる方針を決めた。指導員の1人には、女子学生と円滑なコミュニケーションを図れることを期待し、今年採用した女性技術者を充てる方向だ。職務経験の浅い若手職員が責任感を強めるきっかけになればとの期待もあるという。
今年は、関東甲信の1都8県にある計52事務所のうち、25事務所(本局含む)がインターンシップの参加者を募集している。申し込みの期限は6月11日。8月には、各事務所の参加者を一堂に集めた業務説明会を開き、学生たちに情報交換の機会を提供する予定だ。
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