2015年5月12日火曜日

【最近の団地はなかなかやるな・・・】都市機構が団地再生で民間とコラボ

「無印良品」とコラボし改装した高島団地の室内
 都市再生機構が、民間企業との協力による団地再生事業に取り組んでいる。若者に人気がある家具を企画・販売する量販店や、間仕切りで自由に間取りを変更できるように室内を改修するノウハウを持った企業などと協力し、居住者の高齢化や施設の老朽化が進む団地の付加価値を高める。色調や間取りが画一的な団地のイメージを変え、居住者を増やすのが狙いだ。

 ◇若者に人気の家具採用、間取りも自由に◇

 「団地の建設ラッシュだった1970年代と比べ、今の賃貸住宅やマンションは間取りの選択肢が増えている。当時建設された公団住宅の画一的な間取りは多様化したニーズに対応できていない」。都市機構は、管理する団地(約1700団地、約75万戸)の課題をこう分析する。
 民間のノウハウを採用して室内を更新した初弾案件の一つが、京都市伏見区にある「観月橋団地」だ。設計会社の「Open A」の監修の下、空間を広く見せるために天井を高くしたり、子育て世代の入居を想定してキッチンを広くしたりと室内の改修事業に12年から取り組んでいる。リビングの一部を寝室として使用できるように空間を仕切る引き戸も設置した。その結果、賃貸に関する問い合わせが倍増。予想以上の反響だったという。
 反響が大きかったことを受け、都市機構は関西圏で始めた民間との連携事業を全国に展開することにした。先行して首都圏の東京、神奈川、埼玉で協力体制を強化している。
 川崎市麻生区の「虹ケ丘団地」や横浜市旭区の「左近山団地」などでは、大型量販店のイケアが販売する家具を室内に設置する。モノトーンの室内に、青や黄、緑などカラフルな家具を配置したモデルルームを紹介し、従来の団地の印象を一新する狙いだ。「見学者が従来の9倍以上に増えた。企業と協力した事業の中では一番効果が出ている」と担当者は胸を張る。

 ◇画一イメージを払しょく、居住者増狙う◇

 東京都板橋区の「高島平団地」などでは、家具や寝具を扱う「無印良品」で設計を担う企業「MUJI HOUSE」と協力して住戸改修に取り組んでいる。内壁を取り払って従来より広い空間を創出したり、部材の組み合わせで形や容量を変えられる棚を配置したりと、「好みに合わせて改修できるのが最大の魅力」と担当者。
 白色の内壁や木目を生かした家具など無印良品の特徴を生かしたデザインで統一された室内は、20~30代に好評という。
 横浜市金沢区の「金沢シーサイドタウン」では、2月から東急ハンズと協力。約2畳の押し入れを活用し、専用キットの木材で棚や机、ベッドなど家具を組み立てて新たな居住空間を創出するプロジェクトを始めた。
 生活空間を拡張できるほか、好みに応じて家具のサイズや位置を変更できるので機能性も高い。「家具を居住者自身が組み立てるので、日曜大工に似た感覚も楽しめる」と担当者は魅力を語る。

「イケア」のカラフルな家具が印象的な虹ケ丘団地
 3社と連携した成果を担当者は「企業にとっては、団地が商品を紹介する展示場になっているのかもしれない。ウイン・ウインの関係が構築できた」と分析。今後は成果を詳しく調査し、新たに協力する企業を検討する方針だ。
 企業との協力のほか、都市機構は3月26日に建築家・隈研吾氏らを招いた「団地再生プロジェクト」も創設した。横浜市磯子区洋光台にある3団地をモデルに、集会所のデザインコンペの実施や商業施設の誘致を検討。16年度末までに再生策をまとめるという。
 プロジェクトの立ち上げを発表した記者会見で都市機構の上西郁夫理事長は「次の世代に魅力ある団地を残すための方法論が重要になる」と強調。プロジェクトの成果を全国の団地に応用していく考えを示した。イケアや無印良品との協力も今後、千葉、愛知、福岡の団地に広げていくという。

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