一律の取り組みでは女性活躍の場は広がらない・・・ |
◇男性本位の価値観から脱却を◇
建設業に女性の活躍の場を増やそうとの機運が高まる中、そうした風潮に冷めた目を向ける人もいる。
建設会社の管理部門に長く勤務する中野智子さん(仮名)。男社会の建設会社ではこれまで、現場勤務の女性技術者はごく少数。女性社員の大半は事務職が占めてきた。それなのに、業界で最近盛り上がりを見せている女性活躍推進の取り組みには、現場で働く女性技術者・技能者への支援ばかりが目立つと中野さんは感じている。
事務職で頑張っている女性社員を社内報で紹介したら、「『けんせつ小町』ではない」と周囲から指摘された。「事務職・技術職を問わず、女性社員への評価や女性の働き方が男性本位で決められている」。そんな不満がある。
十数年前、学生時代の就職活動は超氷河期。4年制大学を出た女子は特に厳しく、周囲には就職できない人も多かった。他の業界を志望していたがかなわず、最後は知り合いに紹介してもらった今の建設会社に一般職で何とか滑り込んだ。
しかし、バブル崩壊後の経営難で、会社の業績は入社当時からずっと低迷。給与は上がらず、将来も見通せず、何度も転職しようかと考えた。それでも続けてきたのは、元社員から「会社を離れてうちの良さが分かった」という声を聞いたことや、配属先の上司や同僚に恵まれたことが大きい。
ところが数年前、上司が交代し、これまで任されてきた仕事の範囲が狭められた。部内での検討事項も女性社員の意見を一切聞かずに進めてしまう。男性が何でも解決しようという、女性社員から見れば閉鎖的な風土が根を張る。
疎外感が増し、仕事に対するモチベーションも下がる一方だが、会社の将来に明るい兆しも感じつつある。新入社員の中に女性の総合職が多くなってきたことだ。
数年前の人事制度改革により、一般職からも総合職に移れるようになった。もっとも、どうすれば総合職に移れるのかは不透明で、会社から詳細な説明もない。
総合職社員の比率が上昇すれば、給与など管理コストも増大するため、女性が大半を占める一般職を会社が積極的に総合職に登用するとは考えにくい。時流に倣って制度を見直しても、それは一時のポーズ。根本的な企業体質はそう簡単には変わらないと思う。
業績の長期低迷で人員削減などリストラが進められたが、最近は景気回復を受けて工事も増え、社内に明るさが戻りつつある。数年前に結婚した。子どもはほしいが、育児をしながら仕事をするなら、任される業務も責任も限定的な一般職のままの方がよいのでは、とも考える。
働く女性が皆、キャリア志向で前向きとは限らない。「仕事に対して受け身で、会社に対応を委ねる女性は多い。そうした『可もなく不可もなく的な中間層』を会社組織の中でどううまく機能させるか。少数の女性技術者のための環境整備より、そちらの方が先に取り組むべき課題ではないか」。
仕事に対する価値観は人それぞれ。一律の取り組みでは女性の活躍の場は広がらないと中野さんは見る。周囲に流されず、自分なりの働き方を見つけたいと思っている。
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