2021年7月2日金曜日

【20年7月豪雨から1年】熊本建協・土井建会長に聞く「国土強靱化を恒久的な事業に」

 ◇道路代替機能の必要性実感◇

 2020年7月豪雨から1年を迎える。甚大な被害を受けた球磨川流域は地形的な特徴などから治水対策が長年の課題であり、事前防災の難しさが改めて浮き彫りになった。熊本県建設業協会(熊本建協)の土井建会長は地域の守り手として、国土強靱化の大切さを訴える。

 --応急対応を振り返って。

 「全国的な大規模災害の経験や熊本地震の教訓を生かし、国土交通省や県と官民挙げて速やかな対応ができた。被災地である八代、人吉、芦北の支部が司令塔として機能した。八代支部では無料通話アプリのLINEを活用して被災状況などの写真や位置情報を共有し、役に立った。今後は発注機関とも新たな情報共有ができるツールがあればいい」

 --応急復旧から今後、本復旧へと移行する。

 「多くの工事発注が見込まれるが、熊本地震の復旧とは異なり、球磨川流域は平地が少なく施工ヤードの確保が難しく、現場へのアクセス道路が限られる。主要幹線道路の国道219号も全面通行できない中、発注される工事にどこまで対応できるのか。やってみないと分からない。被災直後は土砂搬出用のダンプトラックが不足した。県南地域は生コン工場が少なく、今後は生コンが不足するだろう」

 --入札の不調・不落が懸念される。

 「県全域の建設業者で復旧・復興を進められればいいのだが、道路や施工ヤードなど多くの制約がある。県にはロットの大型化など不調・不落が発生しないような発注形態を要請している。当協会の各支部、国交省の出先事務所、県振興局では意見調整や受注量調査を随時行っている」

 --豪雨からの教訓は。

 「国道219号が寸断されたが、九州縦貫自動車道があったため、人吉地区や坂本地区の被災地へ支援物資の輸送や緊急車両の通行ができた。道路のリダンダンシー(代替機能)は必要だと実感した」

 「熊本地震の北側復旧ルートのような道路を整備してほしい。あるいは、現在は途中で球磨川を渡る国道219号を両岸に整備すればリダンダンシーになり、創造的復興にもつながる。用地が狭いため、鉄道の上を道路が通る立体化のようなものも要望したい」

猛暑の中でも応急復旧工事を続けた
(国道219号、熊本県球磨村で)
 --地域を守る建設業の重要性は増している。

 「日本中で大規模災害は起こりうる。国土強靱化を恒久的な事業にすべきだと要望し、手応えを感じている。コロナ収束後、緊縮財政に転じても国土強靱化は継続すべきだ」

 「当協会は12支部に693社の会員がいる。地域に精通した支部会員の持てる力を掌握し、有事にはすぐに対応できる発注機関を含めたネットワークづくりを進めたい。『地域住民のため』という意識を今まで以上に持ち、会員とともに被災者の目線で一刻も早い復旧に向け頑張りたい」。

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