2021年7月6日火曜日

【記者手帖】ピンチを跳ね返す沿線開発を

  今でこそおしゃれなイメージのある関西民鉄の雄・阪急電鉄も、明治末期の創業時は農村を走る「ミミズ電車」と言われたそうだ。沿線人口が少なく利用者は見込めないと冷やかす声もあったそう。だが周囲の冷ややかな視線をよそに創業者の小林一三は、自然あふれる沿線の環境に可能性を感じていた◆小林は沿線に造成した宅地街に居住者を呼び込み、大阪市内まで電車で運ぶことを思い付く。都市部よりもゆとりある暮らしを前面に押し出し人口増加を実現した。世界初となる駅直結型のデパートなど、乗客を増やすアイデアを次々に繰り出し、多くの鉄道会社が沿線開発に力を注ぐきっかけになった◆収束の見えないコロナ禍で鉄道各社は苦境に立つ。先日取材した民鉄の開発担当者は人口減少が続く中、いかに「住みたい」「遊びに行きたい」街をつくれるかが、事態を打開するポイントと話していた◆「ピンチはチャンス」。自然共生や職住接近を目指した個性的なオフィス、住宅を整備するなど新たな潮流ができつつある。希代のアイデアマン・小林に負けない開発プロジェクトをぜひ紙面で紹介したい。(慶)

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