2021年12月7日火曜日

【記者手帖】人材育成の難しさ

  「発注者にプロジェクトの青写真を描ける人間が少なくなった」。取材で十数年ぶりに応対してくれた東京都の営繕担当部長の言葉が心に突き刺さった。公共建築の発注は景気や財政状況によって、もろに影響を受ける。大規模で複雑な事業ほど多くの知見が得られる一方、緊縮財政下で同等のノウハウを得るのは難しい。担当部長の表情は終始曇りがちだった◆人材の確保・育成は受発注者共通の課題だ。ある建設コンサルタントの経営トップは「インフラ整備が急ピッチで進む中国は、技術者のレベルも格段に上がっている。いずれ日本は経済だけでなく、技術力でも差をつけられる」と先を読む。「日本の技術は世界最高レベル」と言われていた時代は終わったのだろうか◆多くの経験で身に付けた知識は唯一無二の財産。記者という仕事であれば、多くの人と会話をし、さまざまな記事を執筆する作業こそが成長する鍵を握る。「困難な時こそステップアップするチャンス」。新人時代に先輩から言われた一言で自分自身を鼓舞している◆記者生活16年。自分を成長させつつも、後輩記者をどう育成するか。常に模索している。(司)

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