2021年12月6日月曜日

【回転窓】動線計画も重要文化財

  東京都渋谷区にある「国立代々木競技場」が8月に国の重要文化財(重文)に指定されたことは記憶に新しい。重文指定を追い風に建築界では世界遺産登録を目指す機運も高まっている▼言わずと知れた建築家・丹下健三氏(1913~2005年)の代表作。つり構造の屋根によりダイナミックな外観と中央に伸び上がる壮大な内部空間を創り出し、「デザイン的にも技術的にも秀でた戦後建築を代表する作品」と評価された▼先日のメディア見学会で「石敷きやプロムナードも建物の一部として指定範囲に含まれている」と文化庁の担当官。丹下氏が描いた動線計画も文化財として保護されたのだという▼建物だけでなく動線も含めて高く評価されたことはどんな意味があるのか。広い視野で動線を計画し、建築と都市をつないで人の流れを生み出す。そんな構想力が求められているのかもしれない▼64年の東京五輪のために建設された競技場は今夏の大会でもハンドボールなどの会場になった。リビングヘリテージ(生きている遺産)の重文指定を受け、一般の人たちが近現代建築に関心を寄せるきっかけにぜひなってほしい。

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