2021年12月6日月曜日

【駆け出しのころ】東急建設執行役員建築事業本部法人営業統括部長・久田浩司氏

  ◇方程式を解く営業の喜び◇

 大学時代は就職先に金融関係を志望する人が周りに多かったのですが、自分にはもっと別の道があるのではと思い悩んでいました。たまたま自宅の近くに建設現場があり、だんだんと建物が形になり汗水流して働く人たちの姿を見て、建設業への関心が湧いてきました。

 入社当時の当社は建設業界の中でも設立から二十数年と若い企業で、生き生きとした印象を受けました。最初に配属された東京支社の会計課では10カ月ほどの研修を経て、渋谷周辺の建築工事の現場事務を担当。忙しい時は最大5、6現場を兼務し、現場を駆け回って経理関係の処理をしていました。

 3年目ごろまでは担当業務をこなすのが精いっぱいで、主体的に業務を改善しようとまで頭が回りません。担当現場の事故対応も経験し、安全の大切さを痛感するとともに、建設業は人の力を結集したものづくりだと再確認しました。一つの現場をじっくりと担当した期間はわずかでしたが、業務に関わった工事のビルが竣工した時の喜びは大きかったです。

 5年目に九州支店の経理課に異動しました。仕事の規模が大きく、量も多かった東京との違いを感じましたが、支店長をはじめさまざまな部署の人たちと距離が近く、何でも話が聞ける環境は良かったです。個々の動きと地域や事業全体の動きが見られたのは、自分の成長につながりました。

 2年ほど経理を担当した後、営業に回ります。自信はまったくありませんでしたが、先輩の「営業は方程式だ」という言葉に興味を持ちました。受注という答えに行き着くには顧客のニーズやキーマンなど、さまざまな要素を探りながら組み立てた方程式を解き、最後に喜びを味わう面白さを語ってくれました。

 最初は官庁営業を任され1日だけ先輩と一緒に回りました。次から地図を見ながら車を走らせ、営業先を一人で回る日々。携帯電話もない時代、先輩からの「どこでサボっていても誰も分からないが、半年、1年後に支店長や上司とのあいさつ回りの時にその間のあなたの仕事ぶりが全部分かる」との言葉が心に残っています。

 あちこち回って1週間で配った名刺は500枚以上。数カ月してこれでは仕事は取れないと思い、これまで支店の現場などで付き合いのあった地元建設会社の方々と相談しながら情報を集め、時には応援してもらいました。初めて自分なりに工夫し、学校関連の工事を受注できた時の喜びと自信が営業を続けるモチベーションになりました。

 100件の仕事があれば、100通りの営業スタイルがあります。組織的な営業戦略も重要ですが、足を運んで人と会うという基本は一緒です。チャンスを見逃さないためにも、歯を食いしばって人に会う回数を増やす。多くの人に会いながら刺激を受け、勉強させてもらえる営業は魅力のある仕事です。

入社5年目、九州支店で経理課に勤務していた(中央が本人)

 (ひさだ・こうじ)1987年鹿児島大学法文学部経済学科卒、東急建設入社。執行役員九州支店長などを経て2021年から現職。鹿児島県出身、58歳。

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