2021年12月22日水曜日

【内閣府有識者会議、巨大地震の被害想定公表】死者数10万~19万人、建物全壊は8万~22万棟に

  内閣府が設置した有識者会議は、東日本大震災の震源となった「日本海溝」と十勝沖から北方領土にある「千島海溝」沿いで想定される巨大地震の被害想定をまとめた。避難行動が遅くなる冬季の深夜に最大クラスの地震が発生した場合、最大で日本海溝地震は死者約19万9000人、全壊約22万棟、千島海溝地震では死者約10万人、全壊約8万4000棟に達するとした。

 昨年4月に公表した最大規模の地震と津波の推計を基に、中央防災会議の下部組織「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)」(主査=河田恵昭関西大学理事・特別任命教授・社会安全研究センター長)が被害想定を21日に公表した。

 被害想定エリアが積雪寒冷地域に当たることから、▽冬・深夜▽冬・夕▽夏・昼-の3パターンに分けて被害量を推計。冬季の深夜は積雪・凍結で避難速度が低下し、冬季の夕方は火気使用が多いため地震に伴う出火・延焼が起きることなどを考慮に入れた。冬季は積雪荷重が加わり揺れによる全壊棟数が増えるとも予測している。

 全壊棟数はパターン別に日本海溝地震約22万棟前後、千島海溝地震約8万1000~8万4000棟と予測。両地震ともに津波による被害が多くを占める。被災地の資産などの被害は日本海溝25・3兆円、千島海溝12・7兆円と推計。うちインフラ・ライフラインなど公共部門の被害は日本海溝7・8兆円、千島海溝4・6兆円とした。道路施設被害(路面損傷、沈下、のり面崩壊、橋梁損傷など)に限定すると、日本海溝約6500カ所、千島海溝約1300カ所で発生すると予測した。

 津波からの早期避難や建物の耐震化などによる防災対策の効果も推計した。▽津波避難ビル・タワーの活用・整備▽建物の耐震化率100%▽急傾斜地崩壊対策100%▽感電ブレーカーなどの設置-などの対策を講じれば、両地震ともに最悪のケースから死者数を8割減少できる。

 寒冷地特有の課題として避難時に低体温症で死亡リスクが高まるケースも想定しているが、避難所への2次避難路整備や備蓄倉庫(防寒備品)整備などでリスクを限りなく最小化できる。建物の耐震化や火災対策の推進で、揺れや火災による全壊建物を数千棟単位で減らせることも示した。

 21日の定例会見で二之湯智国土強靱化担当相は、被害想定結果を踏まえ「防災・減災対策が着実に進められるよう、関係省庁と連携しながら全力で取り組んでいく」と述べた。「地方財政に過度に負担にならないような措置も今後考えていかなければならない」とも話している。

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