◇施工は三井住友建設JV◇
ベトナム北東部のハイフォン市で、同国最長の海上橋となる「ラックフェン国際港アクセス道路・橋梁工事」の建設が、日本の政府開発援助(ODA)を活用して進められている。
ベトナム運輸省PMU2から発注された工事の総延長は海上部と陸上部を合わせて15・63キロ。14年5月から三井住友建設・チュオンソン・シエンコ4JVが工事を進めている。
海上橋という難工事の克服に向け、ジオチューブによる盛り土や支間長60メートルに及ぶスパンバイスパン架設工法を採用するなど、工期厳守へ果敢に取り組む現場を取材した。
◇「チームニャッタン」で難工事に挑戦◇
工事が完成すると、建設中のラックフェン新国際港と、ハノイ~ハイフォンを結ぶ高速道路新5号が陸路でつながり、ハイフォン市の物流拠点としてのアドバンテージは一段と向上する。海上橋の取り付け部となる陸地は河口部の湖沼などが点在する軟弱地盤にあり、建設事務所とセグメントを制作するヤードの確保・整備については「地権者から約10ヘクタールの土地を借り上げて、最初にヤードの埋め立てから実施した」と山地斉三井住友建設執行役員作業所長は着工当時を振り返る。このヤードを確保できたことがその後、工事が順調に進む大きな要因となった。
工事用道路を兼ねるアクセス道路の施工には、海中の盛り土の護岸工事などに使われるジオチューブを採用した。当初は台船にクレーンを配置して海上からの施工を計画したが、潮の干満に影響されて浚渫にも費用がかかることから、陸上から施工できるジオチューブ工法を採用した。
水深2メートル程度の浅瀬に長さ50メートル、外周9・5メートルの繊布ジオテキスタイル製のチューブを3~4段積みにし、陸上から水と砂を混ぜた泥水をポンプで圧送。余分な水分は特殊な繊維から染みだして中には砂だけが残り、護岸を形成するという仕組みだ。
同工法で二つの護岸を建設し、その間に盛り土をして工事用道路を形成した。「敷設したチューブの延長は約2万4000メートルに達し、それを当初予定していた半年で仕上げることができた」(山地所長)。天候に左右されやすい海中での難工事だったが、大きな遅れもなく順調に作業が進んだ。
基礎工事では、将来の埋め立てが予定されている陸上部にネガティブフリクション対策鋼管杭を採用。航路となる中央径間150メートルの主橋では鋼管矢板井筒基礎、海上部アプローチ橋には場所打ちコンクリート杭といった具合に、設定条件に合わせて異なる3種の工法を採用した。
山地所長によると、ネガティブフリクションはベトナムでは初めての採用となったが、鋼管矢板井筒基礎はハノイ市で施工したニャッタン橋(日越友好橋)に続いて2例目。この現場には日本人職員約20人に加え、フィリピン人を中心に外国人のエンジニアが20人近く働いており、「ニャッタン橋を経験しているローカルスタッフを含む350人の職員と技能工で組織を作ったので、まさに日越の『チームニャッタン』で施工している」と話す。
◇スパンバイスパン架設など技術駆使◇
PC上部工は工期短縮を最優先するため、プレキャストセグメント工法を採用した。ハイフォン市側から新国際港に向かう約4・5キロの区間は、PC5径間連続箱桁(75径間)で、支間長60メートルの世界最大級のスパンバイスパン架設工法が導入された。
セグメントの製作は、10ヘクタールを確保したヤードに550メートルの2ラインを配置。6基の型枠により、ショートラインマッチキャスト方式で、それぞれ標準部は2日に1個の割合で製作した。製作済みセグメントを一方の型枠に使うなど接続面の精度を保持。製作されたセグメントは多軸トレーラーでヤードから建設地に運搬された。
スパンバイスパン工法に使用する架設桁は、最大断面高7・8メートル、全長132・8メートルのトラス桁を2列配置し、桁上部につり上げ能力90トンの移動式ウインチを設置。総重量960トン、最大つり上げ荷重1350トンの能力で、1径間の架設を7日サイクルで実施している。2基の架設桁を駆使し、橋長4・48キロを13カ月で施工している。
現在の工事進ちょく率は約90%。所期の目的通り工事は順調に進んでいる。
「ベトナム企業は道路土工事と張り出し施工の橋梁を施工し、私たちは海上部の難易度の高いスパンバイスパン架設工法によるセグメント工事を分担して施工している。一度、ベトナムのスタッフとはニャッタン橋で仕事をしているので、ベトナム人の気質は十分に分かっています」と山地所長。
「外国人のエンジニアの力を借りながら、このまま予定の工期内に安全に引き渡しできるよう頑張りたい」と最後まで手綱を緩めず、挑戦的なマネジメントを実践していく考えだ。
アクセス橋の完成イメージ |