2016年8月23日火曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・145

最先端のテクノロジーで現場どう変わっていくのか…
 ◇「最適解」を追い求めて◇

 ICT(情報通信技術)やロボットなど最先端のテクノロジーを、建設産業にどのように取り込んでいけばよいのか-。

 建設会社で新技術などを活用して業務改善に取り組む部門に所属する前川聡二さん(仮名)。最近は国土交通省が推進している建設現場の生産性向上策「i-Construction」などの取り組みが注目を集め、現場や業務の生産性を高める施策の具体化に知恵を絞っている。

 「世の中の流れや同業他社の動きに後れを取らないように」との上層部の指示を受け、業界内外からの情報・アイデア集めにも一段と熱が入る。

 入社後、技術者として建築設計を中心に現場に関わってきた。近年は3次元(3D)モデルを活用するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の構築に力を入れてきた。社内では2次元の紙でのやり取りがまだ主流だが、3Dモデルの領域は着実に広がりつつあると手応えを感じている。

 業界内では、構造物の設計データや付属する各種情報を3Dモデルに統合し、建設生産の全プロセスで有効活用しようとする動きが活発化。建築物のBIMに加え、土木構造物を対象にしたCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の具体化に向けた官民の取り組みも目立ってきた。

 「こうした先進的な取り組みに対しては、総論では賛成派が多数を占めるが、各論に入ると従来のやり方を刷新することに異を唱える人が少なくない」。BIMやCIMなどの導入は、現場の生産性向上はもちろん、品質の確保や維持管理を含めたライフサイクルマネジメントの効率化などにも寄与するといった効果を分かってはいても、組織や個人が新しいやり方やシステムを受け入れ、それに慣れるには時間がかかると実感する。

 生産システムにいくら最先端のテクノロジーを組み込んでも、それを使う人たちの意識が変わり、スキルも高まらなければ意味がない。技術やシステムはあくまでも手段。最後は人で成り立っている産業だという原点に立ち返って、人材と技術をうまく融合させることが求められていると思う。

 新技術を使える環境を整えるには設備投資も必要だ。コストと手間をどれだけ許容できるかも業務改革を進める上での重要な要素となる。

 「3Dモデルを案件受注のためのプレゼンテーションで活用したい」と営業マンが言ってきた時に、どこまで労力と費用をかけ、どの程度のレベルのモデルを作り上げるかで判断に迷うこともしばしば。何でもかんでも新しい技術・システムを取り入れることが正しいとは限らない。費用対効果などを踏まえ、その時々で最適なやり方を見定めようと心掛けている。

 日進月歩のITが多くの産業の業務革新に大きな影響を与えていることは間違いない。従来の技術より優れた新技術を活用するのは自然の流れでもある。しかし、長い年月をかけて職人が技を磨き、技術者が知恵を絞って新工法を生み出してきた流れとは異なったものにも見える。「目先の新しさにとらわれすぎると、建設業の根幹をなす技術力が逆に弱まるのではないか」。そんな疑問もある。

 変えるべきもの、残すべきものとは-。日々、最適解への模索が続く。

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