施工を熊谷組が担当。同日は、斜面上部の不安定土砂の除去に使用する無人化施工の小型改良バックホウをヘリコプターで斜面頂部に輸送した。
今後、斜面下部で施工中の土留め盛り土の進ちょくを見ながら斜面にバックホウをつり下げ、不安定土砂の除去を進める。
阿蘇大橋地区では4月16日の本震により大規模斜面崩壊が発生。国道57号とJR豊肥線が土砂に埋まり、国道325号阿蘇大橋が落橋した。崩壊土砂量は約50万立方メートルと推定され、うち約40万立方メートルが前面の黒川に崩落したと見られている。
緊急対策工事は斜面上部に残る多量の不安定土砂の崩落による二次災害を防ぐのが目的。監視装置を設けて工事用道路を整備し、斜面下部に不安定土砂を受け止める2段構えの土留め盛り土(高さ3メートル)を設置した上で不安定土砂を斜面下に落とし、その後にのり面対策工を行う。
◇山頂部に小型改良バックホウを空輸◇
作業の安全を考慮し、斜面で行う工事には無人化施工を採用。現場から約1キロ離れたオペレーター室から現場に配備したバックホウ6台、キャリーダンプ4台、ブルドーザー1台、カメラ車3台を交代で遠隔操作し、土留め盛り土などを施工している。
5月5日に着工し、これまでに上段の土留め盛り土は地盤改良を終え、盛り立ての約2割を施工。下段の土留め盛り土は地盤改良や一部の盛り立て工事を進めている。斜面頂部には資材置き場やヘリポートを整備済みで、上段の土留め盛り土の完成後に不安定土砂の除去に着手する。
分解した建機はヘリコプターを使い、現場に搬入・組み立てている |
◇無人化施工で崩壊斜面の土砂撤去◇
同日は不安定土砂の除去に使用する0・15立方メートル級(重量約6トン)の小型改良バックホウ3台をそれぞれ六つのパーツに分解し、ウインチなどの資機材と共に国道57号沿いの資機材置き場から約300メートル上の斜面頂部までヘリコプターを30回往復させて運んだ。
今後、アンカーなどの設置作業や引っ張り試験を行うとともに、今月下旬には斜面に残った樹木を伐採するため、専用のアタッチメントを装着できる0・25立方メートル級(約9トン)のバックホウを今回と同様に空輸し、追加配備する予定。これらを駆使して不安定土砂の除去を完了すれば、斜面下部で有人施工が可能となり、工事が加速する。
九州整備局熊本地震災害対策推進室熊本分室の野村真一総括によると、工事の安全に加え、火山地帯である阿蘇地域特有の「黒ボク土」で重機が動かせなくなるため雨天後の作業再開の判断に細心の注意を払ったという。今後については「(次の段階の)作業に早く着手し、斜面上部の不安定土砂除去の見通しを示せるようにしたい」と話す。
熊谷組の長束聖一作業所長は「地区の皆さんに朝夕ねぎらいの声を掛けてもらい、期待を感じている。一日も早く国道57号の通行が再開できるよう頑張っていきたい」と意気込みを見せた。
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