東京外かく環状道路(外環道)都内区間(東京都練馬区~世田谷区、延長16・2キロ)で、大林組・西松建設・戸田建設・佐藤工業・錢高組JVが施工する「本線トンネル(北行)東名北工事」。延長約9キロのトンネルを大深度地下にシールド工法で構築する。
シールドトンネルとしては国内最長、シールドマシンの直径も国内で過去最大の16・1メートルとなる。発進立坑では6月からマシンの組み立てが急ピッチで進められており、総重量3700トンに上る巨大なマシンが姿の一部を見せつつある。
◇施工は大林組JV、シールド機の組み立て着々◇
外環道都内区間の本線トンネルは、関越道大泉ジャンクション(JCT)~東名高速東名JCT間の大深度地下を利用し、シールド工法で建設される。工事は南行線と北行線をそれぞれ二つに分けた計4工区で発注され、鹿島、清水建設、大林組、大成建設の大手ゼネコン4社をそれぞれ代表企業とする4JVが担当する。
大林組JVは、全線を泥土圧シールド工法で施工する。大断面掘進の消費電力低減と高速施工を目的に、「省エネシールド」と呼ぶシールドマシンを導入。大林組が三菱重工メカトロシステムズ(神戸市兵庫区、長島是社長)と開発したこのマシンは、前面に位置するカッターヘッドの内周部と外周部を別々に回転させる「二重カッター方式」を採用している。内周と外周がそれぞれ最適な周速度と切り込み量になるよう設定できるため、効率的で電力も無駄にしない。直径16メートル、掘削延長9キロの場合、掘進速度が25%向上する一方、電力は30%低減できるという。
マシンの開発を手掛けた大林組生産技術本部シールド技術部の守屋洋一部長は「二重カッター方式は海外で生まれた技術だが、今回工夫したのはスライド機構」と話す。内周部カッターを前後にスライドさせる仕組みのことだ。内周の先行掘削による芯抜き効果でカッタートルクが軽減するため、高速掘進が可能になる。掘削延長も過去最長となることから、懸念されるカッタービットの摩耗やシールドマシンの損傷に備え、耐摩耗性と耐衝撃性に優れたカッタービット(ロングライフビット)を取り付ける。大断面道路トンネルでの二重カッター方式の採用は国内初という。
大型クレーンが稼働する立坑ヤード |
シールドマシンは神戸市から全250パーツに分けて陸送される。最重量のパーツは260トン。トレーラーで運ばれてきたパーツは500トンクレーンを使って地上で組み立て、800トンクレーンで発進立坑から地下約65メートルに据え付けられる。現場で作業を指揮する大林組の大井和憲外環北行シールドJV工事事務所長は、「マシンの組み立て中は飛来落下、墜落、第三者災害に特に注意している」という。その言葉通り、作業中のクレーンブームが隣接工事や高速道路の供用に影響しないようにする対策を複数採用。レーザーバリアを周囲に張り巡らし、接触を感知すると警報でオペレーターに知らせる仕組みを取り入れ、立坑の開口部には自動式の開閉ネットを導入している。
組み立てが進むシールドマシン (二重式シールドの内周部) |
シールドマシンの組み立ては7月8日時点で約6分の1まで進み、11月をめどに完成させる予定だ。シールド発進後は、硬い粘性土が主体の北多摩層、締まった砂が硬い粘性土の薄層を挟む東久留米層、締まった砂れき、砂、硬い粘性土が繰り返す舎人層を掘り進めることになる。掘進目標は月進500メートル。大井所長は「高速施工の実現には、物流が鍵を握る」と強調する。掘削した土砂はトンネル坑内に設置されたベルトコンベヤーで後方に搬送。垂直ベルトコンベヤーで地上に運び、土砂ピットにためた後、ダンプトラックで搬出する。
一方、セグメントは全自動式で地上から坑内に下ろし、多目的運搬台車「MSV」を使い、坑内先端まで送り込む。1リングを13パーツで構成し、1パーツ当たりの重量は約10トン。場所によって求められる強度が異なるため、RCセグメント、合成セグメント、鋼製セグメントを使い分ける。
大量の土砂搬出とセグメントの搬入に伴い、相当数のトラックやトレーラーが現場を行き来することになるため、トレーサビリティーを導入してオンタイムで車両と積み荷を管理。掘進データの分析や評価を行う統合管理システムも構築する。
大井所長は「JVの職員だけで80人を超す大規模現場。掘進が始まると、昼夜兼行の作業となる。工期を守るためのさまざまな工夫が必要だ」と意気込みを語る。
《工事概要》
【工事名】=東京外かく環状道路本線トンネル(北行)東名北工事
【発注者】=中日本高速道路東京支社東京工事事務所
【施工者】=大林組・西松建設・戸田建設・佐藤工業・錢高組JV
【工事場所】=東京都世田谷区大蔵~武蔵野市吉祥寺南町
【主要工事】=シールドトンネル本体工9099メートル、横連絡坑工8カ所、地中接合工1カ所
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