◇若者が将来託せる産業に◇
千葉、茨城県では老朽化した公共施設の改築・更新やインフラ施設の長寿命化対策など建設投資の増加が予想される。
建設業の需要が期待される一方で、技術者・技能者の高齢化や若年入職者の不足が加速し、建設産業全体として中長期的な「担い手の確保」が深刻な課題となっている。
こうした状況を踏まえ、各県と建設業界、学校が連携し、「若者が将来を託せる産業」として建設業界のPRに力を入れている。
◇千葉県-出張・体験授業で魅力伝える◇
千葉県県土整備部が事務局を務める千葉県魅力ある建設業推進協議会(CCIちば、内海秀幸会長)は、県内の小・中学校で建設業の仕事を紹介する出張授業に取り組んでいる。授業では土木分野に焦点を絞り、江戸時代に印旛沼の洪水の解消に尽力した染谷源右衛門が手掛けた事業を紹介した後、新川で進められている護岸工事について解説。工事で使用する鋼矢板の大きさ(13メートル)を示すため、紙でできた実物大の鋼矢板を披露するなど生徒の興味を引くための工夫を凝らしている。
毎回、千葉県建設業協会(千葉建協)の会員企業からゲスト講師を招き、建設業の妙味や自身が携わった工事の思い出など実際に働く上で感じることなどを生徒たちに紹介。本年度は9校で実施する予定だ。
CCIちばは、出張授業の拡充を目指し、新たに「建築分野」をテーマにしたプログラムを開発中で、年度内に2校でテスト授業を行う。プログラムの開発はNPO法人企業教育研究会が担当。17年度の導入を目指している。既存の土木分野のプログラムを各学校が単独で授業できるよう教員向けの授業も実施するとしている。
工事の第一線で活躍する県内の建設業関連団体もそれぞれ担い手の確保に向けた働き掛けを行っている。千葉県建設業協会(千葉建協)は、各支部や青年部会を中心に県内の小学校~高校で測量器やバックホウの操作などを体験する出前授業を実施。昨年は、初めて普通高校で体験授業を実施するなど、対象も拡大している。
国や県が主催する子供向けの職業体験イベントに協力し、建設機械の乗車体験、れんがと砂を使ったアーチ橋造りなど子供が楽しみながら建設業の技術を学ぶ機会も提供。千葉県鉄筋業協同組合(池田愼二理事長)は、県立の工業高校主催の「鉄筋組み立て講習会」に講師を派遣している。講習を受けた生徒が鉄筋業者に就職し、母校で実施する講習会に講師として参加するなど、担い手の確保に一定の成果が表れている。
◇茨城県-人材確保へあの手この手◇
茨城県では、特に地場ゼネコンが技術者だけでなく事務系社員の確保にも苦戦している。そこで、茨城県建設業協会(茨城建協)を中心に、高校生・専門学校生の現場実習や、1万人以上が訪れる建設業のPRイベントなどを開催。活動を推進する中で、新たな課題も見えてきた。
県内の地場ゼネコンは、全国の建設系学科がある大学に求人広告を出しているが、来年入社の人材確保が難航しているという。特に数年求人を出さなかった事務系の社員不足が深刻で、ある地場ゼネコンの社員は「事務系は週休2日を確保でき、給与も安定しているが、建設業の3Kのイメージが先行してなかなか人が集まらない」という声を漏らし、人材の確保には労働環境の整備はもちろん、業界全体の一層のPRが重要と見る。
茨城建協と建設未来協議会は、地域建設業の人材確保・育成に向け、1995年から県内の建設系の高校や専門学校の生徒対象の「建設現場実習」を実施している。今年は9月までに154人の生徒が45社の現場で実習を行う予定。既に実習に参加した専門学校生からは「現場の雰囲気を体験できて進路を考える上で役立ちそう」といった感想が寄せられた。
同協議会の広報担当者によると、生徒の受け入れに適した実習現場を見繕うのは簡単ではないが、前年度の実習後に実施したアンケートでは、7割の生徒が「建設業を希望する」と回答するなど、生徒の建設業への理解促進や就職意欲の向上に手応えを感じている。
茨城県土木部、関東地方整備局などとは、共催で国内最大規模の建設業のPRイベント「建設フェスタ」を毎年開催。昨年は雨が降る悪天候の下、約1万2000人が来場した。
イベントでは、ショベルカーやホイールローダーの建設機械の試乗コーナー、地元建設関連団体による展示ブースなども設けられている。中でも、親子競演丸太切りやまき餅を体験できる住宅のミニ上棟式、建設分野のクイズラリーなどのコーナーが好評だ。
本年度は同イベントを10月30日に茨城県ひたちなか市の笠松運動公園で開く予定で、今回で23回目となる。
反面、関係者は大規模なイベントを長年続けていると、「実施すること事態が目的になりかねない」と危惧(きぐ)する。今後、茨城建協らは工業高校生にボランティアとして参加してもらうなどいかに周囲を巻き込むPRを展開できるかが鍵になりそうだ。
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