2016年8月18日木曜日

【放置自転車対策に一役】技研製作所、可搬式駐輪システム開発

神奈川県藤沢市に設置されているモバイルエコサイクル
 ◇都心駅に照準、五輪需要も虎視眈々◇

 東京都内などで問題になっている駅前の放置自転車。駅前は一等地だけに駐輪場の建設用地の確保が難しく、地下を利用するにも膨大な費用を要するため、各区の担当者らは解決策に頭を悩ませている。こうした行政ニーズに応えられる商品として、技研製作所が国内で初めて、設置・撤去が素早くできるコンパクトな可搬式・機械式の立体駐輪システム「モバイルエコサイクル」を開発。PRに力を入れている。

 「用地の確保が難しく、駐輪場の設置に至らなかった」。こう話すのは、都営地下鉄三田線の御成門駅(港区)と内幸町駅(同)で駐輪場の整備計画にかかわった東京都青少年・治安対策本部総合対策部交通安全課の担当者だ。

 港区内には地下鉄を中心に32の駅があるが、18駅には駅前駐輪場がない。用地を探したくても、計画する台数を十分に収容できるだけの敷地を確保できないことが整備を妨げる大きな要因になっている。別の理由から整備が滞っているのが地下鉄銀座線の虎ノ門駅。同駅前で放置されている自転車の数は毎日20台程度と少なく、都の担当者は「これだけの少数に対応する駐輪場は作れない」と困惑する。

 地下に駐輪場を計画する自治体もあるが、費用と時間を要するため、計画が停滞または中止となるケースも出ている。駅前に駐輪場を整備する場合、整備用地が後々、駅前開発に組み入れられることも想定する必要があり、設置・撤去が安く簡単にでき、しかも大きな敷地が不要で、少数の自転車収容にも対応できる駐輪場を求めるニーズは高い。

 こうした自治体の需要に着目し、技研製作所が12年に開発したのが「モバイルエコサイクル」だ。立体機械式で持ち運びが簡単な可搬式の駐輪システムで、直径6・7メートル、高さ5・9メートルの円筒形の空間に58台の自転車を収容できる。神奈川県藤沢市などで採用されている。一般的な平置き駐輪場(58台収容)の設置には107平方メートルの敷地が必要になるが、モバイルエコサイクルは半分以下の46平方メートル。狭い敷地での整備に最適だ。

 ◇省スペース・低コスト、海外展開も視野に◇

 同社が駐輪場市場に進出したのは1998年。地下空間の建設で培った技術力を生かし、地下駐輪場「エコサイクル」の開発・販売に乗りだした。しかし、「設置には大規模な掘削工事が必要で、地下に作る場合はどうしてもコストがかかった」と同社の営業担当者。このため、地下式立体構造の駐輪場の技術を応用し、簡便性に着目して作ったのがモバイルエコサイクルだ。

駐輪システムの組み立て手順
必要な資材はトラック1台で運搬できる。徹底した分割組み立て方式を採用し、設置に必要な日数は1~2日。撤去も1日で完了する。恒久的な使用だけでなく、イベント開催時などの一時的な利用も可能だ。平均出庫時間は9・7秒と、朝夕のラッシュ時でも利用者を待たせることなく収容できる。

 モバイルエコシステムの設置の簡便さや入出庫の効率の良さは海外でも評判が高まっている。今年2月に台湾で開かれた自転車利用に関する国際会議では、柯文哲台北市長らが「想像以上に駐輪速度が速い」などと高く評価し、引き合いも出ているという。

 さらに外国人が着目したのは外装の自由度の高さだ。外装面を自由に印刷できるため、周囲の景観に溶け込んだデザインにできる。広告・案内媒体として利用すれば広告収入も見込め、設置・運営コストの削減につながる。

 同社が海外への売り込みのチャンスとみているのが2020年東京五輪だ。大会期間中に選手村や競技施設などに仮設の駐輪場を整備すれば、海外から訪れる観客にも商品を広くアピールでき、市場を広げられる。

 東京五輪は「環境に優しい」「コンパクト」が売り物だけに、都内での自転車利用が促進されるきっかけになる期待も大きい。五輪で観客の速やかな移動を助ける交通手段として、日本シェアサイクル協会も1万~3万台のシェアサイクルを実現させるよう国や都に働き掛けを行っている。同社はこうした動きを捉え、まちづくりの事業者などにモバイルエコサイクルの利点を伝えるPR攻勢をかける。

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