◇税金使わずきれいで衛生的に!◇
スタジアムやコンサートホールなど大規模公共施設への導入が進んでいるネーミングライツ(施設命名権)。これを公衆トイレに採用する地方自治体が増えている。横浜市などは、命名権の対価がトイレの改修や役務だけという金銭のやりとりがない新たな手法を取り入れた事業も展開中だ。企業にとっては人通りの多い駅前などの公衆トイレで社名をPRすることができる。トイレを清潔に保つことで社会貢献の役割も担い、大きなイメージアップにもつながる。
東京・渋谷区は、全国に先駆けて公衆トイレのネーミングライツ事業を2009年度に開始。今年2月時点では区内7カ所の公衆トイレで事業契約を結んでいる。
排水管の維持管理などを手掛ける管清工業(東京都世田谷区)は、恵比寿駅西口近くにある公衆トイレを「恵比寿KANSEIトイレ」と名付け、自社の技術を駆使してトイレの維持管理に取り組んでいる。誰もが快適に利用できるトイレをコンセプトに、施設内には消臭効果の高いコーティングをしているという。
東京・原宿の竹下通り沿いにある公衆トイレのネーミングライツを取得したのはテレビのアニメーション番組の企画・制作などを手掛けるジェンコ(東京都港区)。「神宮前一丁目スシニンジャトイレ」と名付けたトイレの外壁には自社のアニメキャラクターが描かれ、若者や外国人観光客が多い場所で大きな宣伝効果を果たしている。
◇命名権対価が改修工事や役務のケースも◇
横浜市が導入しているネーミングライツ事業は、命名権の対価がトイレの設備改修や役務というのが大きな特徴だ。トイレ専門の総合サービス事業を全国で展開しているアメニティ(横浜市神奈川区)は、新横浜駅近くにある公衆トイレを「ドゥアメニティ新横浜駅前トイレ診断士の厠堂」と命名。事業を開始するに当たり、衛生設備や照明器具の取り換えなどトイレの改修費に360万円相当の初期投資を行った。その後は同社が持つ専門知識を生かし、トイレのメンテナンスや点検などの役務を実施している。
市の担当者は、同社が行っている役務は金額にすると「年間50万円程度に当たる」としている。11年に開始した事業は3年契約で2期目に入った。契約が切れる今年も同社からは更新したいとの意向を受けているという。
命名権の対価がトイレの改修・役務だけというネーミングライツ事業は埼玉県和光市も取り入れている。事業パートナーはトイレの衛生管理などを行うCSリレーションズ(埼玉県越谷市)。同社は和光市駅前の公衆トイレの和式便器をすべて洋式化。電球のLED化やベビーベッドの新設も行っている。
ある自治体の担当者は、公衆トイレのネーミングライツ事業を「(自治体・企業・利用者の)ウイン・ウイン・ウインの関係だ」と話す。自治体にとっては財源確保や民間のノウハウを活用したサービスの向上、企業は宣伝効果につながることに加え、利用者にとってはトイレがきれいで使いやすくなる。わずかな投資で中小企業でも参画できる公衆トイレのネーミングライツ事業はまだまだ広がりそうだ。
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