2018年4月23日月曜日

【建設業の心温まる物語】光陽(大阪府)・原田浩一さん

 ◇苦しいときは出口の一歩手前◇

 入社して2年目の話です。会社の上司から、鉄骨造の14階のマンション新築工事に行くように言われました。当時、足場工事を行ったことはありましたが、鉄骨工事はほぼ初めてで、何をするにしても、やり方や進め方が違うので、分からないことだらけでした。

 現場の職人さんに「おまえ、今日からハイステージの責任者な!」と言われ、やったことのない私は、ただ言われたことをすることしかできませんでした。

 1日目、2日目に2節目の鉄骨から上のハイステージの作業を行った後、3日目から地上でハイステージの段取りにまわるように言われました。地上でネットやトピックの段取りや、トラックの荷さばきもするようにとの指示などを行っていました。ところが、地上から荷揚げした鉄骨を、上部に仮置きする場所が悪かったため、どんどんまわりに迷惑をかけ、工程が遅れてしまいました。

 そのとき、職長のAさんが「俺に任せろ。よく見とけよ」と言って、担当を変わってくれました。Aさんはテキパキと材料をさばき、なんと1日で元の工程に戻すことができました。私は、地上で行う作業をなめていたことにようやく気づきました。

 その日の晩にAさんに呼ばれ、「現場の作業もデスクワークも世の中のすべての仕事は『段取り8分、あとが2分』『苦しいときは出口の一歩手前』だ」と教わりました。

 夏の暑い中での作業で本当に苦しい現場でしたが、鉄骨の最後の梁が収まった瞬間、意味もなく泣いてしまいました。その晩、職長さんと飲んだビールの味がほろ苦くも、すごくおいしかったことは忘れられません。

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