◇信頼し任せてもらうために◇
小学生の時に読んだ子ども向けの本に、図画工作が好きな人は建築士に向いていると書かれていました。自分もそういったことが好きでしたので、いつしか建築を意識するようになり、小学校の卒業アルバムには建築の設計士になりたいと書きました。
建築の道を進んできたという意味では、このころの思いを実現しているといえるかもしれません。そして子どもの頃から好きなサッカーは今も続けています。
入社して最初に配属されたのは大学の増改築工事で、当時の会社で一番に大規模な現場でした。着任当日からまず覚えたのは雑事です。所長をはじめ15人ほどの上司や先輩がおられ、朝にはコーヒーや日本茶などそれぞれに好みの飲み物を出すのが日課でした。新人の仕事というのはこんなものから始まるもので、やることがないよりはましと考えていました。
現場の仕事を覚えていくのに、マンツーマンリポートのやりとりが大変役立ちました。現場で覚えたことや分からないことなどを書き、定期的に先輩からチェックを受けるというものです。常にメモし、何かあればスケッチするという習慣もこれで身に付きました。
新人時代で覚えているのは、私には厳しさが足りないと先輩から指摘されたことです。現場ではこちらがどれだけ真剣かを、厳しい口調で言わなければ伝わらないこともあるという教えでした。「仲良くなるのとなれ合うのとは違う」と言われたことも強く印象に残っています。
現場でロングスパンエレベーターの仮設図を任されて描いたのが、技術者としてのやりがいを感じられた最初だったと思います。今ではCADですぐに描けますが、何日かかけてようやく描き上げた時はうれしかったものです。
他大学のグラウンドに建てるクラブハウスの工事に携わった後、鉄筋コンクリート(RC)造で全面タイル貼りの建築工事を担当します。大変に難しい工事でした。これをやり遂げた時、自分で胸を張れるほどに大きな達成感が得られたのを思い出します。
技術者は基本を知っていないと良しあしの判断ができません。若い人たちには基本を覚え、早く自分で責任を持ってやれるようになってほしいと期待します。技術者に限らず、お客さまはそうした人を信頼し任せてくれます。
資格取得も重要で、自分の幅を広げられます。工事部長の時には、資格試験を受ける若手社員にポイントを短期集中で教えていました。しばらくたち、今度はそれを覚えていた社員から、自分の現場にいる部下にも教えてほしいと頼まれたことがありました。この社員は見事合格し、少しは役に立てたかと思っています。
(いいむら・としあき)1981年東京電機大学工学部建築学科卒、安藤建設(現安藤ハザマ)入社。第二建築事業部工事部門工事部長、首都圏建築事業部副事業部長、安藤ハザマ執行役員首都圏建築支店副支店長兼営業統括部長などを経て、18年4月から現職。茨城県出身、61歳。
入社後初めて配属された建築工事現場で |
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