建築家には図面を書くだけでなく、本音で語り合うコミュニケーションが求められる。その相手は一義的に建築主となるが、建設する場所や地域にある物質などとも会話しなければいけない▼奇抜なデザインで創っても結局のところ建築は物質として場所とつながる-。東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで開催中の建築家・隈研吾氏の個展を訪ね、改めてそう気付かされた▼バブル崩壊後、地方の小さなプロジェクトを通じて物質に興味を持ち「負ける建築」「自然な建築」など独自の理念を実践する隈氏。木や竹を使う建築家として広く知られるが、紙や土、石、金属、ガラス、瓦、樹脂、膜、繊維などさまざまな物質を探求する。一つの作品ができても必ず課題が残り、挑戦は終わることがないという▼唯一扱わない物質がコンクリート。猛スピードで大きなボリュームを創るのに適した20世紀型の物質だとし、「もう一度、さまざまな物質と生き生きとした会話を始めよう」と呼び掛ける▼個展会場には隈氏が対話を続けてきた物質が濃密に展示され、その物量に圧倒される。会期は5月6日まで。また足を運びたい。
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