国土交通省九州地方整備局の「小倉合同庁舎(28)建築工事」は、分散する官署を集約して利便性を高めることを狙いとする。地域の防災拠点や市民の憩いの場としての役割も担う。
発注者側の監督員として従事する森雅史営繕部保全指導・監督室工事係長(写真㊨)のモットーは「受注者と仲良く笑いながら工事を進める」こと。建築施工を手掛ける広成建設(広島市東区、国広敏彦社長)も森工事係長の考え方に共感し、プロジェクトに臨んでいる。
◇常に笑顔で施工に当たる◇
築40年近くが経過した庁舎を新しく建て替える事業は北九州市小倉北区で進む。分散していた五つの官署を集約することで、利用者への効率的なワンストップサービスの提供が可能になる。地域の防災拠点として機能が果たせるよう自家発電を導入するなど、市民の安心・安全な場所となることも目指している。
名城として知られる小倉城を含めた勝山公園に隣接する施設は、文化・歴史と生活の利便性が調和した街のシンボルとして期待が集まっている。環境負荷の低減にも十分配慮する建物は、積極的な木材の利用や省エネルギー化といった要素を取り入れている。風格ある小倉の街並みとの調和を考え、外観も景観に配慮したデザインになっている。
JR西日本グループの広成建設九州支店が建築施工を手掛ける工事は17年2月14日に始まり、8月9日までの工期で進められている。
プロジェクトの完成を目指しパートナーとして施工に当たっている森工事係長は1975年生まれ、一方の広成建設の田村健太郎所長は74年生まれでほぼ同世代。森工事係長の実家は電気工事店、田村所長は祖父が造作大工の仕事をしていたこともあり、共に子供の頃から漠然とだが「ものづくり」に興味を持っていた。
そんな2人が工事を進める上で常に気に掛けているのは、地域の人たちにも喜ばれるような現場の運営だ。近隣に小学校があり、観光客も多い地域での工事なだけに、森工事係長は「仮囲いの中で行われていることを国としてもアピールしたい」と考えた。
森工事係長の考えに応えようと田村所長は、仮囲いの外側から現場の中がのぞけるようにすることを提案。仮囲いに「何が見えるかな? LOOK」と描き、小窓から中が見えるように工夫したことで、現場の前を行き来する人たちが工事に関心を持つきっかけになっているという。現場のすぐ脇にはバス停留所があり、現場と停留所が連動する形でゆとりスペースを設けるという工夫もしている。
多くの人たちが見守る工事なだけに、安全や品質は絶対に重視しなければならない。同時に周辺環境と調和するような取り組みも欠かせない。いろいろなアイデアを出してくれる森工事係長と相談しながら、田村所長は“のぞき穴”以外にも児童たちが描いた絵を仮囲いで紹介するなど、仮囲いを有効に利用したさまざまな活動を展開。「会社に持ち帰っても恥ずかしくないような取り組みができていると思う」と胸を張る。
◇親しまれる現場へアイデア続々◇
発注者と受注者が意見を出し合いながら前向きに取り組み、笑顔が絶えない現場。プロジェクトに対する関係者のモチベーションは高く「順調すぎるほどうまくいっている」と森工事係長。田村所長も「森さんの人柄に助けられている部分は多い」と話す。
現場には広成建設から女性技術者が配属されている。昨年12月には、日本建設業連合会(日建連)九州支部会員各社で働く女性職員が現場に集まり、「けんせつ小町施設見学会・懇談会・交流会」が開かれた。
田村所長は、花びらをあしらったけんせつ小町のマークが現場にあるだけで「雰囲気が違う」と述べ、閉鎖的な現場が依然として多い中で「少しでも明るいイメージを示していけるようにしたい」と語る。
森工事係長も「国交省も女性の技術者を増やしていきたいと考えており、この現場でも女性活躍を前面に打ち出していきたい」と意気込んでいる。
発注者と受注者が連携し女性の活躍を含め、明るいものづくりをアピールしている。「常に周囲の人たちから見られていることを意識することが現場に緊張感をもたらし、頑張ろうという原動力になる」。森工事係長と田村所長は異口同音にそう語る。8月の竣工まで約5カ月。しっかりとしたチームワークで明るく前向きに、現場運営に取り組んでいく。
《工事概要》
【工事件名】小倉合同庁舎(28)建築工事
【工事場所】北九州市小倉北区域内5番1号
【構造規模】RC造6階建て延べ5867m2
【発注者】 国土交通省九州地方整備局
【設 計】佐藤総合計画
【施 工】広成建設(建築)、日本電設工業(電気設備)、新日本空調(機械設備)、フジテック(エレベーター設備)
【工 期】17年2月14日~18年8月9日
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