◇繊細な意識と仕事の積み重ね◇
『漫画 君たちはどう生きるか』は、小説の概要をつかむ目的で漫画にするコミカライズではなく、漫画として独立した面白さのある作品にしようと取り組んだ。でもこれまで原作がある漫画を描いたことはなく、吉野源三郎氏の名著をどれくらい変えて、また変えないのか。そのバランスを見極めるのが難しかった。
これほど多くの方々に読んでもらえる作品になるとは思っていなかった。中でも中高生の読者は、主人公のコペル君が深く落ち込み、思い悩むシーンに共感してくれているようだ。悩んでいる渦中の人というのは俯瞰(ふかん)できない。自分もそうだった。今、自分が立っている位置や行為にどういう意味があるのか。それを俯瞰的な「引き」で見ることができ、同時に「寄り」も駆使しながら物事の考え方について問い掛けをしているところが、若い人たちには新鮮だったのかもしれない。
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