19年度完成を目指し急ピッチで堤体工事が進む八ツ場ダム |
国土交通省が八ツ場ダム(群馬県長野原町)の現場見学を中心に企画しているインフラツーリズム「やんばツアーズ」。17年春から始まったツアーは1年間で3万人近くが参加するなど大盛況。ダム工事の見学者数は16年度と比べおよそ10倍になったという。リピーターが多く、ファンクラブも結成された。地元の女性が務める「やんばコンシェルジュ」の案内も好評で、刻々と変化するダイナミックな現場の“今”を上手に発信している。
「出来上がる過程は今しか見られない」。コンシェルジュの1人、土屋早佳さんはこう話す。関東エリアで建設中のダムは八ツ場だけで、「今だけ・ここだけ」という希少価値がツアーをより魅力的にしている。新緑や紅葉、さらにはナイトツアーなど季節や時間帯で様相が変わることも強みの一つだ。
観光ルートは主に2種類。ダム上部へ行くルートは全景を眺めることができる。もうひとつは、ダム建設に伴い移設されたJR吾妻線の旧線路を通るルート。ダムを見上げると、その存在感に圧倒される。
◇〝おまんじゅう〟例えにコンクリ打設工法説明◇
ダムをよく知らない人にも理解を深めてもらおうと、ツアーでは分かりやすさにも気を配る。高速施工を実現するため、工事では外側と内側で異なるコンクリートを打設する「巡航RCD工法」を導入している。専門用語で説明してもツアー参加者は理解しにくいため、まんじゅうの「あんこ」と「皮」に例えて説明する。コンシェルジュの小野澤紗姫さんは「自分の説明でお客さんに理解してもらい、『また来たい』と言ってもらえるとうれしい」と笑顔を見せる。
やんばコンシェルジュを務める土屋さん㊧と小野澤さん |
昨年から地元温泉協会や国、町らが参画する「チームやんば」も活動を開始。見学で配られるダムカードを見せれば、道の駅で割り引きが受けられるサービスも始まっており、ダムを起点に地域振興が広がりを見せている。
ダム建設に伴い周囲の道路拡充も進む。地元生まれの土屋さんは「道が広くなり、運転しやすくなった。生活環境の改善を感じる」と、ダムを通じた変化を前向きにとらえている。
ダム本体工事は清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステムJVが担当。進捗(しんちょく)率は3月29日時点で約6割と、工事は順調に進んでいる。
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