◇やり抜く意志が成長を促す◇
学生時代、将来の仕事について明確な考えは正直持っていませんでしたが、自然に携わる土木の世界に関心を持っていました。縁あって試験を受けた鉄建建設の面接では「トンネルをやってみたい」と伝え、入社後はトンネル現場を中心に土木技術者として経験を積み重ねてきました。
最初の赴任地は青森の青函トンネルでした。電車と車を乗り継いで竜飛崎にたどり着いた時に抱いた、最果ての地に来たような感覚は今でも覚えています。国家的プロジェクトの大現場で1年半ほど勤務した後、上越新幹線の中山トンネルの工事に移りました。この現場も大量の湧水や変状する地山などを克服する難工事でした。入社間もない頃、こうした大変な現場での経験が今の糧になっています。
最初の3年ぐらいまでは厳しい現場で休みも十分に取れず、仕事を続けるかどうか迷いがありました。しかし、苦労しながら一つ一つ取り組んできた成果が連なり、仕事の達成感や面白さを感じられるようになりました。大現場で人脈が広がったことも将来につながりました。
休みは確かに多くありませんでしたが、その分、充実感がありました。休日の前日、早めに仕事を切り上げ先輩たちに連れられて青森の町に車で移動し、しこたま飲んで泊まる。何をしたわけでもありませんが、その時の開放感がオンとオフの切り替えになっていたと思います。
トンネル屋にとって貫通の達成感は他に代え難いものがあります。至福の時間であり、それまでの苦労がリセットされます。本坑の貫通式は発注者や地元の関係者も出席し、法被を着てみこしを担ぎ、たる酒を酌み交わしながら苦労をねぎらい、喜びを分かち合う。導坑が貫通した時も一升瓶を担いで乾き物などを用意し、現場関係者だけで貫通式を行います。
これまで8本のトンネル現場を担当し、最後の北陸新幹線の松ノ 木トンネルで作業所長を務めました。社員や協力会社の人たちを従え、自分の意志で現場を動かすことはこれまでにない経験でした。やはり若い技術者には、所長を目指すという気概を持って働いてもらいたいと思います。
若い世代にある程度の責任を持たせながら、失敗する前に助言を与えるのが理想的。自分で仮説を立て、先々を読みながら業務を進めることで現場を見る力を養っていく。目の前の仕事をやり抜く意志を持ち、まずは10年頑張ってほしいです。新入社員には、業務に向かう自らの姿勢と人とのコミュニケーションが、人を成長させるのだと伝えています。
先輩たちも下に苦労な面ばかり見せたり、愚痴を言ったりしてはだめです。上を目指そうとやる気を引き出し、若い世代を導くこともわれわれの使命です。
入社3年目。上越新幹線中山トンネルの貫通式で (左端が本人) |
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