都が優先的に事業化を検討する6路線 |
平成の30年間は、東京圏の鉄道網が大きく広がった時代だった。平成初期の1991年には東京メトロ南北線と都営地下鉄大江戸線が開業。1995年に新交通ゆりかもめ、1996年には臨海副都心線(現在のりんかい線の一部)が開業し、台場地区など臨海部の発展に寄与した。平成後期の2005年にはつくばエクスプレス(TX)が開業。08年には東京メトロ副都心線が全線開通し、周辺県を含めて利便性が向上した。鉄道開通と沿線開発の相乗効果で、世界的にも巨大な居住・経済圏が形作られてきた。
都が事業化を検討する6路線で頭一つ抜けた存在が「羽田空港アクセス線」だ。JR東日本の深澤祐二社長は3月の定例会見で、同線の東山手ルート(JR山手線田町駅付近~東京貨物ターミナル付近)について「われわれが事業主体として進めることを前提に環境アセスを申請する」と表明している。
都都市整備局の担当者は「6路線はそれぞれ事情が異なる」と指摘する。採算性の裏付けが必要とされる路線もあれば、工事着手できる物理的な前提条件がそろっていない路線もある。ただ「どの路線も検討熟度が高まれば、すぐに事業化してもおかしくはない」と付け加える。都は本年度1億円の予算を配分し、6路線を中心に調査・検討を深める。
多摩都市モノレールは、箱根ケ崎方面と町田市方面の2路線で延伸を検討している。都施行の街路事業による整備を想定。延伸ルートの導入空間となる道路整備が先行する箱根ケ崎方面について、都は需要予測調査を基に詳細な検討を進める方針だ。一方、延伸ルートが確定していない町田市方面では、町田市が専門組織を昨年設置し、独自に公共交通網や沿線街づくりの調査・検討に乗りだしている。3月には、市が想定する延伸ルート沿線に団地を抱える都市再生機構と連携協力協定を締結。延伸を見据えた団地のストック再生などで先手を打つ。
都交通局は3月、大江戸線の延伸で1日3万人の利用者増が見込めるとする直近の需要予測を明らかにした。混雑緩和を念頭に置き、列車運行本数や車両編成数などを練り直す。延伸ルートの道路整備はめどが付き、練馬区内の新駅予定地(土支田、大泉町、大泉学園町)周辺では街づくりルールの策定作業が進んでいる。
大田区の松原忠義区長が「19年度早々に整備主体(第三セクター)を設立したい」と意欲を見せる新空港線(蒲蒲線)。東急多摩川線を地下化して京急空港線に乗り入れる計画だが、既存の東急蒲田駅と京急蒲田駅との高低差など物理的な課題もある。関係者は「乗り換え利便性を高めるため、街づくりと一体で考えなければいけない」と指摘。駅周辺一帯の再編整備の必要性を示唆する。
地下鉄8号線(東京メトロ有楽町線)の豊洲~住吉間の延伸も整備主体が固まっていない。都は3月に「東京メトロによる整備・運行が合理的」との検討結果を示したが、関係者間の調整はこれからだ。都は本年度、構造や設備、運行計画などの検討を東京メトロに依頼する予定だ。
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