2019年5月15日水曜日

【回転窓】合成の誤謬

「合成の誤謬(ごびゅう)」という経済用語が登場して久しいが、上場各社の決算発表を見ているとこの言葉が浮かぶ。好決算が相次ぐものの、日本経済は依然としてデフレから脱却できていないようだ▼企業は生産性を向上させ、無駄を省き、利益を上げる。稼いだ金を社員に還元すれば良いが、まずは借金を返し内部留保する。デフレで経済規模が縮小する中では当然の行動だろう▼ただマクロの世界ではどうか。一企業や一個人では正しい行動も、デフレ下では逆効果を生む。需要不足で供給過剰なデフレ状態で生産性を向上させると、モノがあふれて競争が激化し、さらなる価格低下を招く▼中野剛志氏の『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室(基礎知識編)』(ベストセラーズ)によれば、政府がインフレ時の経済対策ばかり実施しているからいつまでもデフレから脱却できないと手厳しい。インフレ時とは逆の対策を行うべきだという▼労働者を守り、競争を抑制し、大きな政府をつくる。財政出動し公共事業もどんどん実施する。デフレから長年脱却できない現状を考えると、こうした施策も現実味を帯びてくる。

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