2019年5月13日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・226

産業界を挙げて取り組む働き方改革。若手に仕事のやりがい
どう感じてもらうか。定着率の高い会社を目指し、思いを巡らせる
 ◇人の役に立っている喜び◇

 大学で土木工学を学んだ南川好也さん(仮名)は在学中、建設コンサルタントでアルバイトをしていた。就職氷河期の真っただ中で迎えた就職活動。設計の仕事に携わりたいという希望はあったものの、なかなか就職先は決まらなかった。

 大学で所属していた研究室とのつながり、そしてアルバイト先という縁もあり現在の会社に勤めることになった。入社から20年余り。今はチームリーダーとして部下を持つ立場になった。

 南川さんの会社は地下鉄を中心とする鉄道関係、下水道や道路など公共インフラの調査や設計を手掛けることが多い。今まで最も長く携わったのは地下鉄関連の仕事。駅施設のバリアフリー化改良や駅と近隣ビルを結ぶ接続通路などの設計に関わってきた。

 仕事の喜びは「自分が設計したエレベーターやエスカレーターなどが実際に多くの人たちに利用されているのを見て、人の役に立っているという実感が持てる」こと。ただ仕事では苦労も多い。発注機関によって鉄筋のかぶり厚さが違ったり、仕様書に盛り込まれている事項が微妙に異なったりする。成果品の提出方法も違い、きちんと理解していないと大変なことになる。「前回と違った指示を繰り返す発注機関の担当者もいて、頭を抱えることもある」。

 任された業務に責任を持ち、自らの役割を果たす。土木構造物の設計という社会に役立つ仕事の重要性を認識しながら、部下を持つようになった今はどう働いてもらうかにも、気を配るようになった。

 地下鉄の駅と近隣ビルをつなぐ連絡通路は、ビルの開業に合わせて完成させる必要がある。設計が遅れれば工事に影響が出る。限られた時間で作業することも多く、年間を通じて長時間労働になりがちだ。生産性向上がそう簡単に実現できない現場の悩みを抱えつつ、部下を持つ身になり「新入社員の定着率を何としても高める」ためにも、働き方改革を実現したいと思っている。

 会社は毎年新入社員を採用しているが、さまざまな理由で退職してしまう人がいることが気掛かりだ。入社したばかりの社員に極力残業させないようにするなど、配慮もしている。それでも会社を去ってしまう後輩がいる。

 新人だった頃の自分がどうやって仕事を覚え、やりがいや楽しさを感じるようになったのか。南川さんは当時を振り返ることが少なくないという。「なぜ辞めてしまうのか、もっと真剣に考えてみたい」と強く思っている。

 時代の流れとともに仕事に対する考え方も変わってくる。自分の部下、そして後輩たちが会社や仕事に何を望み、どうしてほしいのか。任された仕事をしっかりと果たしながら、「定着率の高い会社」にする方法に日々思いを巡らせる。

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