担い手確保は多くの企業にとって重要な経営課題の一つ。これまで業界間、企業間で激しい人材獲得競争が繰り広げられてきた。建設関係各社も採用活動に知恵を絞っているが、苦戦も目立つ。
次代を担う若者や女性にうまくアプローチするには、彼らが置かれた現状への理解が欠かせないだろう。就職活動時期を迎えた学生向けの著書などがあるブロガー兼ライターのトイアンナさんに就活戦線の動向を聞き、建設業界が取るべき今後の採用戦略を探った。
バブル期並みの売り手市場がここ5年ほど続いた。就活市場が学生優位となったことで、若手と中堅以上の世代間に文化差が生まれている。最も大きな変化はハラスメントの定義がかなり広がったことだ。ベテラン社員が飲み会の場で、男性社員に恋人の有無を尋ねる光景は一昔前ならよく見られた。だが現代ではセクシュアルハラスメントと取られかねない。ハラスメントには訴訟のリスクもある。知らなかったでは済まされなくなっている。
新入社員との接し方に苦労しているベテラン社員も多いのではないだろうか。男女の役割を設けないジェンダーレスの会話に慣れておらず、若手との相互理解が進んでいない印象を受ける。まずは慣れることから始めるべきだ。
例えば飲み会の席で若手に声を掛けてみる。「若い世代はどんな話題で盛り上がっているの?」などでいい。まずは分からないことを素直に聞いてみる。年上の方から年下に歩み寄り教わることも大切だ。その勇気があればジェンダーギャップを乗り越えた付き合い方ができるだろう。
そうした歩み寄りは就活生から見た建設業界のイメージを知る上でも役に立つ。人事担当者などは異業種を志望する学生にこそ、建設業界の評判を聞いてみてほしい。自分の志望する業界だと遠慮して話しにくいものだが、違う業界を志す学生ならば忌憚(きたん)ない意見を言ってくれるだろう。
現在の就活生は企業に対して「(企業と個人の)成長」と「ワーク・ライフ・バランス(WLB=仕事と家庭の調和)」という一見矛盾した二つのことを求めている。以前まで成長をうたってきた日本型大企業の多くが、働き方改革の影響でWLBを打ち出すようになった。就活生も二つの条件を満たすのが当然という意識を持っている。
一方、採用活動には就活生の「記憶に残る」ことが大切という面もある。多くの企業は成長とWLBを両方訴える無個性な採用活動を行いがちだが、それとは逆に、どちらかに振り切った採用方針を立ててみてはどうか。他の会社に埋もれずに会社の個性を強く打ち出せるだろう。
ある外資系企業は「退職後に活躍する人材になれる」ことを採用時のアピールポイントにしていた。実際は福利厚生も充実しており、そうした点もアピールできたはずだが、あえてポイントを絞ることでモチベーションの高い学生を集めた。
建設業界には良くも悪くも、WLBより成長に重きを置いている企業が多いと感じる。そうした業界のイメージを逆手に取り、WLBを強調する手もある。業界内の他社との差別化につながり、これまで建設業を志望しなかった層を取り込めるかもしれない。そして意外と知られていないのは、技術者は「一生食べていける」ということ。建設業は一生ものの仕事だともっとアピールしていいはずだ。
《トイアンナさんプロフィル》1987年生まれ。慶応大学卒業後、外資系企業でマーケティングに携わる。2015年にブロガー兼ライターとして独立。就活やキャリア、恋愛など幅広く情報を発信する。18年に出版した『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』は発行部数2万部を突破した。
次代を担う若者や女性にうまくアプローチするには、彼らが置かれた現状への理解が欠かせないだろう。就職活動時期を迎えた学生向けの著書などがあるブロガー兼ライターのトイアンナさんに就活戦線の動向を聞き、建設業界が取るべき今後の採用戦略を探った。
□学生が求めるのはー企業の成長?ワークライフ・バランス?□
バブル期並みの売り手市場がここ5年ほど続いた。就活市場が学生優位となったことで、若手と中堅以上の世代間に文化差が生まれている。最も大きな変化はハラスメントの定義がかなり広がったことだ。ベテラン社員が飲み会の場で、男性社員に恋人の有無を尋ねる光景は一昔前ならよく見られた。だが現代ではセクシュアルハラスメントと取られかねない。ハラスメントには訴訟のリスクもある。知らなかったでは済まされなくなっている。
新入社員との接し方に苦労しているベテラン社員も多いのではないだろうか。男女の役割を設けないジェンダーレスの会話に慣れておらず、若手との相互理解が進んでいない印象を受ける。まずは慣れることから始めるべきだ。
□こちらから歩み寄り、ギャップ乗り越える□
例えば飲み会の席で若手に声を掛けてみる。「若い世代はどんな話題で盛り上がっているの?」などでいい。まずは分からないことを素直に聞いてみる。年上の方から年下に歩み寄り教わることも大切だ。その勇気があればジェンダーギャップを乗り越えた付き合い方ができるだろう。
そうした歩み寄りは就活生から見た建設業界のイメージを知る上でも役に立つ。人事担当者などは異業種を志望する学生にこそ、建設業界の評判を聞いてみてほしい。自分の志望する業界だと遠慮して話しにくいものだが、違う業界を志す学生ならば忌憚(きたん)ない意見を言ってくれるだろう。
□学生の記憶に残る個性ある採用活動を□
現在の就活生は企業に対して「(企業と個人の)成長」と「ワーク・ライフ・バランス(WLB=仕事と家庭の調和)」という一見矛盾した二つのことを求めている。以前まで成長をうたってきた日本型大企業の多くが、働き方改革の影響でWLBを打ち出すようになった。就活生も二つの条件を満たすのが当然という意識を持っている。
一方、採用活動には就活生の「記憶に残る」ことが大切という面もある。多くの企業は成長とWLBを両方訴える無個性な採用活動を行いがちだが、それとは逆に、どちらかに振り切った採用方針を立ててみてはどうか。他の会社に埋もれずに会社の個性を強く打ち出せるだろう。
□建設業は「一生もの」、もっとアピールして□
ある外資系企業は「退職後に活躍する人材になれる」ことを採用時のアピールポイントにしていた。実際は福利厚生も充実しており、そうした点もアピールできたはずだが、あえてポイントを絞ることでモチベーションの高い学生を集めた。
建設業界には良くも悪くも、WLBより成長に重きを置いている企業が多いと感じる。そうした業界のイメージを逆手に取り、WLBを強調する手もある。業界内の他社との差別化につながり、これまで建設業を志望しなかった層を取り込めるかもしれない。そして意外と知られていないのは、技術者は「一生食べていける」ということ。建設業は一生ものの仕事だともっとアピールしていいはずだ。
《トイアンナさんプロフィル》1987年生まれ。慶応大学卒業後、外資系企業でマーケティングに携わる。2015年にブロガー兼ライターとして独立。就活やキャリア、恋愛など幅広く情報を発信する。18年に出版した『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』は発行部数2万部を突破した。