2020年6月17日水曜日

【会社のこと、伝わってますか?】就職みらい研の20年版就職白書、「企業の情報提供、学生ニーズと隔たり」

 リクルートキャリアの研究機関・就職みらい研究所(増本全所長)がまとめた「就職白書2020」によると、就職活動中の学生が求める情報と企業が発信する情報の間に大きな隔たりがあることが分かった。

 企業が情報提供したと認識している一方で、就活生は十分な情報を得たと受け止めていない。入社後に「こんなはずではなかった…」とギャップを感じ、離職につながる一因にもなりかねず注意が必要だ。

 同研究所は、企業が開示する情報と学生のニーズとの合致度を検証した。回答数は1256社。調査期間は19年12月~20年1月。学生は1904人。調査期間は19年11~12月。

 企業が情報提供したとする割合と、学生が認知した割合を項目ごとに比較すると、学生の認知度の方が圧倒的に低い。最も差が大きかったのは「社内研修・自己啓発支援の有無とその内容」(56・5ポイント差)。次いで「求めている具体的な能力・人物像」(52・6ポイント差)、「製品やサービス」(50・0ポイント差)、「具体的な仕事内容」(46・3ポイント差)、「初任給」(44・9ポイント差)の順だった。いずれも就職先を選ぶ上で欠かせない基本的な事項。それが十分に伝わっていない可能性がある。

 社会・経済環境が目まぐるしく変わる中で、年功序列や終身雇用といった旧来型のモデルではなく、ジョブ型雇用が注目されている。その結果、どの会社に行ってもある程度通用するような汎用(はんよう)的な能力が身に付く組織を、学生側が重視する傾向があるという。就職先を選ぶ上で、具体的な仕事内容や身に付くスキルなどの情報が欠かせないが、十分とは言い難い実態がありそうだ。

 先進事例も出てきている。セイコーウオッチは会社説明会とは別に、同社の選考姿勢を解説するセミナーを16年から実施している。応募総数や実際の倍率、大学別の応募人数などを開示するほか、エントリーシートの設問と意図、適性検査の通過ライン、さらには面接の合否判断基準まで徹底的に説明。セミナーを始めてから内定者のレベルが高まり、企業文化により適合した人材が集まるようになったという。

 同研究所の増本所長は「良いところを見てもらおうという着想と全く異なる。企業側が弱みを含めて情報開示することが、学生との相互理解をより深め、入社後のギャップも縮める」と指摘する。

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