2020年6月15日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・257

行政機関の仕事で市民との対話が求められる場面は多い

 ◇寄り添って考える「誠意」を仕事の基本に◇

 道路や鉄道、庁舎といった社会資本は市民生活や経済活動を支える。住民に多くの便益を与える一方、その整備時には土地収用により土地や住宅を失うなど地権者に負担を強いる。時には感情論まで発展し、事業が遅々として進まないことも。都市計画を学んだ栗山剛也さん(仮名)は「市民に寄り添った社会資本の整備や管理に取り組みたい」と国家公務員を志した。

 国土や建設、運輸、観光など幅広い領域を所管する中央官庁は、政策の企画・立案、産業の育成・振興、社会資本の構築・整備と業務も多岐にわたる。仕事を前に進めるため、政治家や有識者、他の行政機関などさまざまな関係者と相対する。

 新人のころ国道整備に携わった。近隣住民との協議や交渉に腐心する先輩が「寄り添って考えていく『誠意』が最も大切だ」と漏らした。本心はどうなのか住民の声に耳を傾け、新しい生活が問題なく始められるよう心を砕いて対応しなければいけない。「誠意を持ってさまざまな人たちと向き合い、理解してもらえるように努力する」。先輩から学んだことは今でも仕事の基本姿勢になっている。

 非常事態が起こった時こそ行政機関は力を発揮しなければいけない。地方勤務のころ、数多くの自然災害を経験した。災害対策現地情報連絡員(リエゾン)として地域の実情を詳細に把握し、総力を挙げて被災者の生活支援に取り組んだ。

 被災経験の少ない自治体は必ず混乱する。「正確な情報に基づき迅速適切、冷静に応急対応していけるよう自治体をきちんと支える」という使命感を持ち、「被災者に寄り添う」と自身を鼓舞し災害対応に当たった。

 頼もしかったのが建設業の存在だった。自身も家族や自宅を失った被災者だったにもかかわらず、救援ルートを確保するため道路をふさいだがれきを取り除いたり、決壊した川の堤防を復旧したりなど必死に対応する姿が胸を打った。「『地域の守り手』という使命と誇りが建設業の皆さんを突き動かしている」。思わず目頭が熱くなった。

 勤務先が変わっても慌ただしい日々は変わらない。そんな中、働き方改革が社会に広く浸透し、不夜城とやゆされることもある霞が関でも、仕事の在り方を見直す動きが出てきた。ワークスタイルを改革する取り組みが始まっている。

 「若いころは終電で帰宅できればラッキーという感じだった。けれども今は空気が違う」。そう感じ始めた直後に新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ事態が起こった。必要に迫られ取り組んだテレワークや時差出勤。新しい仕事の仕方、生活様式にも徐々に慣れてきた。これから定着段階に入る。

 災害時などを除けば若いころの働き方は昔の話。「中央省庁はこれからも重要な政策の立案を担っていく。多くの人に就職先として選んでもらえるよう働き方改革を進めなければいけない」。決意も新たに仕事と向き合っている。

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