2020年6月8日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・256

工場勤務の時もできるだけ現場に足を運ぶよう心掛けている
◇周りへの気配りを大切に◇

 建設関連資材メーカーで働く橋詰聡司さん(仮名)は工場と現場とを行き来しながらキャリアを積んできた。もともと建設関連産業への就職を目指したわけではなく、普通高校を卒業した後に情報処理を学んだ。就職活動の時にものづくりにかかわる会社にしようと思い、志望先を探した中で候補に挙がったのが冷蔵庫、電話、橋の三つ。「一番格好良いのは橋だろう」。そう思って現在の会社に応募書類を送ったことが、今につながっている。

 情報処理を専門としていた自分に与えられた最初の仕事はCADオペレーターだった。操作方法から設計図の読み込み方、設計図を基に材料となる鋼板を切断・加工する作業までステップを踏んで覚えていった。一通りの仕事が身に付いたころには、現場から相談される機会が増えていた。自分の仕事は工場の中だけだと思っていたこともあって、全く違う世界が広がる現場はとても魅力的だった。工場で製作された段階では一つ一つのパーツに過ぎないが、現場で組み立てられて構造物が出来上がると社会を支える基盤になる。

 現場もやってみたい。そうした思いが募り、上司に直訴して現場にも出してもらった。経験を積み現場代理人を任されるようになった。

 現在は再び工場に戻り、現場から発注が来ている資材の工程管理や顧客対応を主に担当している。工場全体を見回しながら調整役として日々奔走している。現場を経験してから、仕事の見方が変わった。それまでは、与えられた自分の仕事にばかり目を向けていたように思う。決して間違いではないが、今は自分以外の人が担う部分をより気に掛けている。

 「誰かがちょっとした工夫をするだけで、その後の作業がとても楽になることがあると分かった。もちろん、逆に苦しめることもある」

 工場から飛び出して周りと話す中で見えてきたことだ。「発注者も工場の人も現場の人も、皆がうまく回るように、相手の気持ちを考えるようになった」と振り返る。

 自分よりも先に相手の気持ちや希望に気を配る。簡単なことではないが、多くの人の力を結集するものづくりの現場では、欠かせない要素だと感じている。誰かの小さな努力が別の誰かの役に立ち、無事に構造物が出来上がる。そうした循環に貢献したいと思っている。そうした気持ちがあるから品質管理にも力が入る。

 「工場にいると製品を送り出すまでが仕事のように思いがち。けれども実際は完成までつながっている。完成した構造物の姿を見るととても充実した気持ちになる」と誇らしげに話す。

 手掛けた製品がトラックに積まれて工場を出発する時、うれしくなって思わず笑みがこぼれる。「おかげさまで楽しく仕事をしている。この楽しさを次の世代に伝えたい」。それが今の目標だ。

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