日本で野外音楽イベントの草分けと言われるフジロックフェスティバルの開催が見送られた。新型コロナウイルスの流行が原因。「安全面を考えると進めることはできない」。主催するスマッシュの日高正博代表は苦渋の決断を下した▼コンサートには自由に立って楽しむスタイルも多い。密が生じる中で、演者と観客との一体感が強まって盛り上がり、体験としての価値を高める。その前提が大きく揺らいでいる▼フジロックというと1997年の初開催を思い出す。初日に台風が来襲し、泥とごみで会場はひどいありさまに。今でこそ「伝説の」などともてはやされるが、快適さからはほど遠く、会場にいて身の危険を覚えた▼主催側のノウハウ不足に加え、十分な準備無しに参加した観客が多かったことが混乱に拍車を掛け、2日目が中止に。これを教訓に以降はごみ拾いやマナー向上に注力。「世界で最もクリーンなフェス」と評されたこともあった▼失敗や制約から新たな境地が生まれるのは何事にも通じる。そこには場を造る側と利用側の双方の協力が不可欠だ。次回は来年8月。次なる一手をどう打つか見ていきたい。
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