2015年4月27日月曜日

【回転窓】幸福って何だろう

 「狙った通りにピッタリと撮れた写真はつまらない」。写真家・土門拳はいわゆる「間のいい」写真を嫌ったという。頭で考えただけの写真では訴える力がないというのだ▼商売柄、カメラを扱うことが多いが、見る人をうならす写真を撮るのは容易ではない。その場の状況やその時の話の内容などを踏まえ、その状況に合った場面を一瞬にして切り取る。一枚の写真が、添えられた文章よりも人々の心に残るということはよくある▼数年前に刊行された『宮本常一が撮った昭和の情景』(上・下巻、毎日新聞社)を見た。民俗学者・宮本常一が1955~1980年の25年間、全国を歩いて庶民の暮らしを撮り続けた10万点以上の写真の中から、850点を収めたものだ▼市井の人々の姿が映し出されているだけの即物的な写真集で、決して何かを狙ったものではないが、強く感じるものがある。写真の中の人々の目の輝きが、今を生きるわれわれとは違って明らかに強い光を放っている▼今よりもずっと貧しかった時代でも、人々は生き生きとした表情をしている。幸福とは何だろうと、あらためて考えてしまう。


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